ジブチ

AMDAジブチ年次報告 ・1999年度

AMDAジブチ事務所
翻訳 藤井倭文子
AMDA Journal 2000年 7月号より掲載

1. プロジェクトの説明

1.1 プロジェクトの目的及び概要

 現在のプロジェクトはジブチ共和国アリ・サビエ地域にあるアリアデ及び ホルホルのUNHCR難民キャンプにいる難民のために適切な医療と健康管理 サービスを提供する事である。

1.2 受益者について

 1990年の終わりから1991年の始めにかけて勃発した武装闘争と内戦の結 果、それぞれの母国から避難したソマリアとエチオピア難民を対象としてい る。1994年8月、ジブチの4ヶ所(アウール·アオッサ、アッサモ、アリア デ、ホルホル)の難民キャンプでは約4万人の難民を収容し、その中の2万 人はエチオピア人で、他の2万人はその殆どがソマリア北西部から来ている ソマリア人であった。アウール・アオッサキャンプは1995年3月に17,000人 のエチオピア難民の帰還後閉鎖された。更に1996年に約4千人のエチオピ ア難民が自発的に本国へ帰還し、受益者数は減少、1998年3月にアッサモ難 民キャンプは閉鎖された。又、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージラン ド、ノルウェー及びその他の国々への移民の機会も数回あった。

 1999年末現在、難民総数は約22,423人と推定されている。

1.3 プロジェクト実施方法

 ONAR、UNHCR、及びAMDAの3者間で結ばれていた難民のための医療 サービス実施に関する協定が1994年から実施されており、現在も継続され ている。0NARSはジブチに於けるUNHCRの中心となる受入機関で、 AMDAはアリアデとホルホルキャンプにおける医療に関して唯一の UNHCRの事業実施団体である。全ての難民援助活動はONARSとUNHCR と密接に協議の上実施されている。

2. プロジェクトの紹介

 アリ・サビエ地域はジブチ共和国にいる難民のための主要な居住地域にな っている。22,423人の難民のうち、その殆どはソマリア人で、中にはエチオ ピア人もいる。難民はアリアデとホルホルキャンプに殆ど均等に分かれて収 容され、1999年12月末現在アリアデキャンプに11,895人、ホルホルに 10,528人が収容されている。ホルホルキャンプは8区に分かれ、アリアデは 10区に分かれている。アリアデキャンプの“J区”にはエチオピア人難民が 収容されている。

 1994年からAMDAはUNHCRとONARSとの3者協定の一環として、ジ ブチの難民キャンプでの医療活動の事業実施団体としての責任を持ってい る。AMDAはONARSと協力して病気の予防と治療、健康の促進など医療サ ービスを提供している。医療活動は常勤の医療関係者(医師、地域保健関係 者、看護婦、管理者、コミュニティーヘルスワーカー、伝統的助産婦)の支 援により実現されている。

 各キャンプには4室を有する2つの医療施設としてそれぞれ給食センター 用テント、厨房テント、栄養障害を持つ人のための給食物倉庫、と治療室が ある。  予防医療サービスは個人に関する衛生問題、水設備、食品のための衛生設 備、ごみの処理法(生活ごみ、人間の排泄物)面において、保健衛生指導者 とコミュニティーヘルスワーカーにより提供されている。難民のために定期 的に行なわれた衛生キャンペーンや保健教育は其々好結果をもたらした。

 健康促進に関するケアは総合的子どもケアと健全な妊産婦のためのケア (妊産婦ケア)という形をとってキャンプ診療所より実施された。総合的子 どもケアとして、BCG,DPT(ジフテリア、百日咳、破傷風)・ポリオ、麻疹 の予防接種、下痢を伴なう疾患の管理、栄養補給という形としてのビタミ ンA剤の配布及び栄養プログラム、子ども達の体重測定管理が行なわれた。 妊産婦ケアに関する活動には妊娠期間中の健康診断、衛生的な出産、出産後 の母親と新生児の健康診断、授乳中の母親へのビタミン剤の配布、相談及び 家族計画に関する材料「避妊薬、Depo-provera(長期避妊薬)の注射)」の支給 という形での家族計画サービスが含まれている。

 治療のための医療ケアは難民の患者が診療された外来ケアという形で提供 された。外科、産婦人科、小児科、眼科、口腔衛生の専門医によるキャンプ 診療所における難民患者の治療及びカウンセリングは1999年に医療サービ スにおける重要な分野を記録した。

 キャンプ診療所への医薬品と医療消耗品の補給は診療所の責任者からの要 請、時には医師の判断にもとづき毎週週始めに行なわれた。医薬品と医療消 耗品の補給はUNHCRからAMDAへ1999年の7月,8月,9月に数回に渡り行 なわれた。医薬品はAMDA事務所で特定の温度のもとで保管された。ワクチ ンは厚生省衛生部から受け取り、AMDAの冷蔵庫の中で特定な温度下 で保管され、ワクチン運搬車によりキャンプへ配送され、ガス冷蔵庫の中で 保管された。子ども達への予防接種はキャンプ診療所にて行なわれた。

3. 主要統計

3.1 人口統計

 過去2年間にわたる統計一覧表が示す様にアリアデとホルホルの両難民キ ャンプの人口は1999年1月の22,210人から1999年12月には22,423人に増加 した。5歳以下の人口も同期間に1,657人から1,913人に増加した。

過去2年間にわたる統計一覧表

     詳     細 1998年 1999年 備    考
難民キャンプでの人口
5歳以下の人口
出産数
生存出産数
粗出産率(千人あたり)
総死亡数
粗死亡率(千人あたり)
成長率
幼児死亡数
幼児死亡率(生存出産千人あたり)
5歳以下の死亡数
5歳以下の死亡率
(5歳以下の人口千人あたり)
妊産婦死数
妊産婦死亡率(生存出産千人あたり)
死産率(生存出産100人あたり)
流産率(生存出産100人あたり)
給食センターへの総入所数
給食センターでの総死者数
外来患者総数
5歳以下の外来患者総数
BCG/POLIO-0

DPT/POLIO-3
麻疹
22,210
1,657
316
224
10%
94
4%
0.58%
22
98%
38
30%

3
13%
2.6%
5%
460
18
37,465
12,210
285

331
338
22,423
1,913
298
285
12.7%
70
3.1%
0.96%
 9
31.5%
18
9.4%

3
10.5%
4.6%
1.4%
394
8
38,706
15,235
353

324
320
213人増加
256人増加
18人減少
61人増加
2.7%増加
24人減少
0.9%減少
0.38%増加
13人減少
66.5%減少
20人減少
20.6%減少

変化無し。ただし生存出産数と比較
2.5%減少
2%増加
3.6%減少
66人減少
10人減少
1241人増加
3025人増加
1999年の予防接種適用率は
123.8%*
1999年の予防接種適用率は74.3%
1999年の予防接種適用率は73.4%

*予防接種適用率が100%を超えた理由は近隣の村落からも新生児が予防接種を受けに来所したため。
粗出産率、幼児死亡率、5歳以下の死亡率、妊産婦死亡率はいずれも重要な健康指標である。
これら全ての著しい減少率は難民キャンプのより良い健康状態を示している。

キャンプ名 1999年1月 1999年12月
アリアデ  難民人口
      5歳以下人口
 11,794
  953
 11,895
  1,092
ホルホル  難民人口
      5歳以下人口
 10,416
   704
 10,528
  821

 両難民キャンプの総人口に占める5歳以下の子ども数は8.5%で、アリアデ では9.2%、ホルホルでは7.8%を占めた。1年間を通しての難民キャンプの 人口は他国への移住、難民自らによる本国への帰還、及び頻繁な移動により 変化する事がある。難民キャンプの新しい人口調査はより正確な人口統計資 料を確認する事ができると思う。

3.2 出生率レポート

  詳  細    アリアデ    ホルホル  合 計
生存出産数:男児  
      女児  
合計  
 75(54.3%)  
 63(45.6%)
  138 
 (両キャンプの48.4%)
 71(48.3%)  
 76(51.7%)  
  147  
(両キャンプの5l.6%)
  146
  139
  285

詳細      割合(%)
2500グラム以上の新生児数    250
伝統助産婦の介助による出産   286
平常分娩  
難民キャンプでの出産
死産                   13 
流産                    4
粗出産率  
     84 %
     96 %
     96.2%
     96.9%
死産率 4.6%
流産率 1.4%
     12.7%/千人あたり

3.2.1  

 アリアデとホルホルの両難民キャンプの生存出産総数は285人を記録し た。この数は特に1999年の下半期に増加し、10月には48人というピークに 達した。その内訳は、男児146人(51.2%)、女児139人(48.8%)である。

3.2.2

 1998年と比較して、1999年の生存出産数は224人から285人(+27.2%)に 増加したが、総出産数は対照的に316人から298人に減少した。死産率は 2.6%から4.6%に増加したが、一方で流産率は5%から1.4%に減少した。キャ ンプ内での出産数が減少した理由の一つは、家族計画活動がキャンプ内に普 及してきた事である。残念ながら家族計画活動は1999年末にやむをえない 事情のために停止された。死産の増加はキャンプ内の伝統助産婦や母子医療に従事している看護婦(MCH看護婦) のために定期的に分娩に関する再教育プログラムを実施する事により減少す る事ができる。妊婦の出産前検診のための通院やキャンプ診療所内での定期的な妊娠中の検診はキャンプ内での流 産率を減少させた。出産総数は減少したけれども、生存出産数は増加し た。


3.3 死亡率

  詳 細 アリアデ ホルホル 合 計
死者数: 男性
     女性
合計  
 16人
 12人
 28人
 21人
 21人
 42人
 37人
 33人
 70人

  詳 細 件数      詳  細 割合
妊婦総死亡数
総子ども死亡数
総幼児死亡数
  3
 18
  9
妊婦死亡率(生存出産千人あたり)
5歳以下の死亡率(5歳以下の子供千人あたり)
幼児死亡率(生存出産千人あたり)
10.5%
 9.4%
31.5%

 アリアデとホルホルの両難民キャンプにおける総死者数は70人で男性37 人、女性33人で、租死亡率(人口千人当たりの死亡数)は3.1%であった、死 亡数は6月から10月にかけて非常に高い。アリアデキャンプでは合計28人の 死者があり、男性16人,女性12人を記録している。このキャンプでの1999年 の租死亡率は2.3%であった。同期間のホルホルキャンプでは死者42人を記 録し、男性・女性の比率は半々で、租死亡率は4.0%であった。両キャンプで共 通する最も多い死因は合併症を伴なう重症の肺炎、結核、重度の栄養不良及 びマラリアで、新生児の死亡は主に早産、仮死分娩であった。キャンプ内で のその他の死因は胃腸炎、心臓疾患、肝炎、脳血管発作、溺死、複雑分娩等 である。

   

 1998年と比較して、総死亡数は94人から70人(25.5%)に減少し、租死亡 率は4%から3.1%に減少した。妊婦の死亡率は13%から10.5%に下がり、1998 年の5歳以下の子ども死亡数が38人にくらべ、1999年には18人に減少し、死 亡率は20.6%減少した(1998年:30%、1999年9.4%)。幼児の死亡は22人から 9人に減少し、幼児死亡率は98.2%から31.5%に減少した。租死亡率、幼児死 亡率、5歳以下死亡率、妊婦死亡率はいずれも健康に関する重要な指標であ る。これらのパラメーターにおける著しい減少は関係者全員の協力により、 キャンプ内での健康に関するよりよいサービスによる健康状態向上を表して いる。

4. 健全な妊産婦のためのプログラム(妊産婦ケア)

     詳   細 アリアデ ホルホル 合 計
妊婦総数  
妊娠中の検診総数
破傷風予防接種1を受けた妊婦総数
破傷風予防接種2を受けた妊婦総数
出産後の検診を受けた産婦総数
授乳中の産婦へのビタミンA配布
出産後の母乳養育:全員
  202
  568
  219
  138
  244
  141
  686
  783
  210
  220
  142
  138
 888
1,351
 429
 358
 386
 279

4.1   

 1999年にはアリアデとホルホル両難民キャンプで888人の妊婦が登録さ れた。
その殆どが4月から9月の間に登録された。妊娠中に検診を受けた妊婦の検 診総数1,351は妊婦1人平均1.5回という数字を示している。妊娠中の検診は 7月から9月の間が最も頻繁だった。

4.2

 1999年、アリアデキャンプでは202人の妊婦が登録された。その殆どが5 月から8月に登録され、妊婦の検診総数568は妊婦が受けた1人平均の検診 が2.8回だった事を示している。

4.3

 ホルホルキャンプでは686人の妊婦が登録された。6月から9月に最も多 く登録され、検診総数783は1人当たり平均して1.1回の検診を受けている。

4.4

 1999年には、両キャンプ合せて51人の新しい女性が家族計画サービスとし て避妊薬やDepo-provera(長期避妊薬)注射を受けた。30人が避妊薬、21 人がDepo-provera注射を受けた。これ以外にも1998年から継続して11人の 避妊薬利用者がいる。キャンプ別では:

      詳   細 アリアデ ホルホル 合 計
避妊薬
Depo-provera注射
家族計画サービスを受けている新女性合計
1998年からの継続─避妊薬
        ─Depo-provera注射
  15
  11
  26
  8
  13
  15
  10
  25
  3
  2
 30
 21
 51
 11
 15

* 家族計画サービスが定着したにもかかわらず、プログラムに必要な物資不足の ために1999年末でこのプログラムを中止する事となった。

5. 総合的子どもケア

5.1 予防接種拡大プログラム
   合   計       アリアデ       ホルホル
詳細 予防接種回数 適用率 (%) 予防接種回数 適用率(%) 予防接種回数 適用率 (%)





BCG  
ポリオ─O  
DPT─ポリオ 1
DPT─ポリオ2
DPT─ポリオ3
麻疹  
ブースター/DPT-ポリオ
  353    123.8%
  353    123.8%
  468    107.3%
  408     93.6%
  324     74.3%
  320     73.4%
  230  
  142    102.8%
  142    102,8%
  170    112.6%
  137     86.7%
  113     71.5%
  107     67.7%
  102
  191    129.9%
  191    129.9%
  298    107.2%
  271     97.5%
  211     75.9%
  213      76.6%
  128

 1999年、アリアデとホルホル両キャンプで353人の新生児がそれぞれ結核 と小児麻痺予防のためにBCGと経口ポリオワクチンの投与を受けた。第1 回、2回、3回にわたるDPTポリオワクチンがジフテリア、百日咳、破傷風 及び小 児麻痺予防のためにそれぞれ468人、408人、324人の幼児に投与さ れた。

5.2

 1999年、合計391人の子どもがビタミンA剤の配布を受けた。私達は6ヶ 月から5歳の全ての子どもにビタミンA剤の配布が実現できるよう努力して いる。ビタミンA剤の役割は呼吸器、胃腸疾患、熱帯熱マラリア、夜盲症及 び眼疾患、皮膚疾患及びその他の疾患等による疾患率及び死亡率の減少に 益々効果を出している。アリアデでは13 5人、ホルホルでは256人の子どもにビタミンA剤が配布された。

5.3 

 1999年、アリアデとホルホル両難民キャンプの補液センターでは軽度から 中度の脱水症状を持つ1,227人の子どもに経口補液、重度の脱水症状の子ど も139人に経口補液を静脈補液と一緒に投与した。キャンプ別では:


   詳  細   アリアデ ホルホル   合 計
経口補液
経口補液+静脈補液
 748
  85
 479
  54
 1,227
  139

5.4 

 1999年、両キャンプの給食センターでは394人の子どもと40人の重度の栄 養障害を持つ大人に治療的栄養給食を提供した。この給食は1日約150〜200 キロカロリーのエネルギーと4〜5グラムの蛋白質を得るために給食セン ターから2時間毎に5回流動食で提供された。極度の栄養不良の子ども(身 長に対する体重が標準の 70% もしくは それ以下)の身長に対する体重が標準の85%達した子どもは給食センターか ら退所させた。ここで体重増加が認められた子どもは88.8%に達した。8人の子どもが栄養補給を受けている間に死亡した。主な原因は、結核、重度の肺 炎、及び心臓疾患等感染症の併発による。キャンプ別では:


   詳  細 アリアデ ホルホル    合 計
栄養補給:  子ども
       大人
体重増加率: 子ども
死亡者:   子ども
 249
  30
  87.7%
  7
 145
  10
  90.4%
   1
 394
  40

   8

6. 罹患率

6.1

 1999年、アリアデとホルホル両キャンプで様々な疾患が38,706件受診された。これは月平均3,225件で難民1人当た り1.7回の通院となる。5歳以下の子どもは15,235件(39.4%)、5歳以上は23,471件(60.6%)を占め、その内訳は下記 の通りである:

   疾患総数      5歳以下       5歳以上
   詳   細 件 数 (%) 件 数  (%) 件 数  (%)
急性上気道感染症
貧血症
下痢を伴なう疾患
耳疾患
回虫浸潤
その他
合計
11,464
4,643
2,687
2,110
1,890
15,912
38,706
29.6
12.0
6.9
5.5
4.9
41.1
100
4,840
1,478
1,422
1,187
1,024
5,284
15,235
 31.8
  9.7
  9.3
  7.8
  6.7
 34.7
100
 6,624
 3,221
 1,209
  923
  866
10,628
23,471
 28.2
 13.7
  5.2
  3.9
  3.7
 45.3
100

6.2

 アリアデとホルホルのキャンプ別総受診数はそれぞれ24,897件(64.3%)、13,809件(35.7%)であった。キャンプ別罹 患率パターンの内訳は下記の通りである:


  アリアデ(24,897件)      ホルホル(13,809件)
  詳  細 5歳以下件数 (%) 5歳以上件数 (%) 5歳以下件数 (%)  5歳以上件数 (%)
急性上気道感染症
下痢を伴なう疾患
貧血症
回虫浸潤
耳疾患
その他
合計
2,347
  858
 839
  642
  773
3,045
8,504
27.6
10.1
9.9
7.5
9.1
9.1
100
4,444
  802
2,289
  580
  348
7,930
16,393
27.1
4.9
14.0
3.5
2.1
48.4
100
2,493
 620
 583
 382
 414
2,239
6,731
37.0
9.2
8.7
6.1
5.7
33.3
100
2,180
 407
 932
 286
 575
2,698
7,078
30.8
5.8
13.2
4.0
8.1
38.1
 100
(34.2%) (65.8%) (48.7%) (51.3%)

6.3 

 アリアデとホルホル両難民キャンプで結核治療のために105人の新患が受 け付けられた。その中には30人の5歳以下の子どもの新患が含まれている。 1999年には治療を受けていた11人の患者が死亡した。アリアデでは結核治 療のために79人の新患(5歳以下の子ども27人を含む)が受け付けられた。 治療を受けていた7人の患者が死亡した。ホルホルでは5歳以下の子ども3 人を含む26人が受け付けられ、4人の治療中の患者が死亡した。殆どの患者 は肺結核であるが、少数の結核性リンパ節炎、脊椎カリエス、及び腸結核も 治療された。

7. 専門化された診療所

 1999年には、両難民キャンプ内に外科、産婦人科、眼科、歯科(口腔衛生) の専門別診療所が設置され、病気に罹っている患者がジブチの遠く離れた病 院へ行かなくてもよくなったし、又他の病院への紹介にかかる費用も削減す る事ができる。

7.1 外科

 両キャンプには6つの診療所が設置されており、173件の手術が行なわれ た。IDRBからのユージン·ムーア医師とその医療チームがAMDA医師と一 緒に乳房の脂肪腫、繊維腫、肉芽腫、繊維腺腫、及び異物、動静脈フィステル、 痔、鼠径ヘルニア、陰嚢水腫等の外科的な医療サービスを提供した。ムーア 医師とチームの方々の支援に対し、心から感謝申し上げる。専門別医療サー ビスは下記の通りである。

  外科        173件
  産婦人科     254件
  眼科        240件
  歯科        158件

7.2 産婦人科

 254人の女性が骨盤内炎症性疾患、子宮頸炎、子宮内膜炎、月経困難症、子 宮出血、膣炎、閉経前後症候群、合併症を伴なう妊娠等産婦人科系の治療を 受けた。ダル・エル・ハナン病院からのSurya Narayan Shah 医師が両キャンプの診療所で支援してくださった。

7.3 眼科

 1999年4月、Al-Ibrahim 財団と Al-basarインターナショナルがアリアデとホルホル両キャンプで73人の眼疾 患患者に医療サービスを行ない、その内53人が治療を受け、16人が視力矯 正のために眼鏡の提供を受け、4人が 白内障の手術を受けた。これ以外にも、アドヴェンティスト・ヘルスセン ターのGallium Mulling 医師がキャンプ内の2つの診療所で167人の眼疾患を持つ患者に視力矯正、白内障、緑内 障、施毛虫症、腫瘍、角膜潰瘍及び瘢痕、表皮爪膜、眼球乾燥症、結膜炎等 の治療を行なった。合計254人の難民が眼科診療室で恩恵を受けた。

7.4 歯科

 2ヶ所の眼科診療所を設け、アドヴェンティスト・ヘルスセンターのJesse F. Agra医師が虫歯、ポリープ、歯肉炎等の口内疾患を治療した。

8. 眼鏡の配布

 1999年、AMDAの好意により視力矯正のために25本の眼鏡が配布された。

9. 提携病院への紹介

 アリアデとホルホル両難民キャンプにある診療所の医療設備は2人の専門 医の協力により、良いプライマリー・ヘルスケアの水準を保っている。しか し、継続的観察や検査を必要とする特殊な疾患を持つ患者のための病院にあ るような設備が不足している。そのため、この部類に属する患者はジブチ国 内の病院とアリサビエのいろいろな病院へ紹介された。

 1999年、合計331件がアリサビエ地域病院、アリサビエ結核病院、ペルチ エ総合病院、ダル・エル・ハナン産婦人科専門病院、ポールホーレ結核専門病 院等、ジブチのいろいろな病院へ紹介された。  紹介されたケースは様々で、再検査、小児科系、産婦人科系、外科系、結 核の疑いを含む内科系疾患等広範囲にわたっている。331の紹介件数は両キ ャンプ合せて月平均27.8件である。

10.2000年迄に小児麻痺撲滅のためのポリオ予防接種

 1999年11月6,7,8日と12月4,5,6日の2回にわたり、アリアデとホルホル 両難民キャンプで5歳以下の子どもに経口ポリオワクチンの投与が行なわれ た。近隣の村落からも多数の子どもが難民キャンプでワクチンの投与を受け たので、予防接種適応範囲は100%以上を超えた。

11. 分娩設備の建設

 1999年、分娩設備の建設がより衛生的な設備のもとで出産できる様、アリ アデとホルホル両キャンプに1ヶ所ずつほぼ完成した。分娩室の完成と委託 による出産器具が到着次第、その機能が開始される。分娩設備はそれぞれ分 娩室、出産前後用病室(ベッド2床)、滅菌室、及び入院した妊婦用の簡易ト イレと風呂が含まれている。

12.キャンプ診療所のコミュニティー・ヘルスワーカーとスタッフのための講習

 内科、外科、小児科、産婦人科、及び地域医療という重要な分野で活躍す るキャンプ診療所の医療従事者とコミュニティー・ヘルスワーカーを教育す る事は、ONARSの地域医療管理者の協力を得てAMDAの医師による重要 な活動となった。講習には患者の診察、栄養障害、治療及び栄養補給のた めの給食、破傷風、貧血症、麻疹、妊娠、母子医療サービス、胃腸炎、その 他の下痢を伴なう疾患、様々な脱水症状の処置、マラリア等いろいろな分野 が含まれている。私達はこの講習により、医療サービスの改善やキャンプ内 での一般的な病気の流行を防ぐための保健衛生管理が向上する事を望んでい る。この活動の成果が既述した1999年の粗死亡率、幼児死亡率、5歳以下の 死亡率、妊産婦死亡率等の減少、及びその他の健康指標の向上等良い結果に 表れている。

13.難民の子ども達の栄養状態調査

 1999年2月、アリアデとホルホル両キャンプで5歳以下の子どもの栄養状 態に関する調査が行なわれた。この調査の結果は別に報告されている。非常 に高い割合の体重不足、発育障害や衰弱した子ども達がいたため、難民キャ ンプにおける栄養補給のための給食プログラムを見直しする事が提案され た。同時に毎月配布されている食料が難民によって十分に利用される方法に ついても検討する事が提案された。

14.難民への栄養プログラム

 食料は生存と健康を維持するための基本的な必需品である。WFPから提 供されている難民1人当たり1日 2,100キロカロリーと68.8グラムの蛋白質からなる毎月の食料により難民の 栄養食物の必要性は満たされている。5歳以下の子どもは給食センターにて 適切な栄養補給状態が観測されている。治療的給食は重度の栄養障害(身 長に対する体重が標準の 70% もしくはそれ以下)を持つ子ども(数人の大人を含む)に子どもが必要とする1日約 150〜200キロカロリーのエネルギーと4〜5グラムの蛋白質を得るために 給食センターから2時間毎に5回流動食で提供された。給食センターへの食 材(DSM、famix、油、砂糖、卵、野菜、果物)やその他の後方支援は WFP、UNHCR、ONARS、とAMDAにより提供された。

 極度の栄養不良の子どもの身長に対する体重が標準の85%に達した子ども は給食センターから退所させた。

 1999年、548人(アリアデで281人、ホルホルで267人)の弱い立場にいる 人達が1日当たりの割当食物を補充するために其々5キログラムのDSMの 配給を受けた。この弱者グループには妊娠及び授乳中の母親、結核やその他 の慢性疾患を患っている難民、障害を持つ子ども(老人も数人含む)、及び身 寄りのない未成年者が含まれている。入院中の患者のために19袋(1袋25キ ログラム入り)のDSMがアリサビエ結核病院へ、15袋がアリサビエ地域病 院へ贈られた。

 多くの問題(障害)があるにもかかわらず、難民のために十分な栄養食物 を提供するための絶大なる努力をされたWFPに敬意を表する。

15. 提案 

 これまでの記述から明確な様に、アリアデとホルホル両難民キャンプの健 康状況は1999年には大変良く管理された。しかしながら、下記の如く更な る改良余地がある。

1. 両キャンプの人口成長率は1998年の0.58%に比べて1999年は0.96%だ った。これは死亡率の減少とより良い医療サービスによる生存出産数の増加 に起因している。人口増加を制限するための家族計画のより合理的な手段が 重要である。しかし、キャンプ診療所で家族計画に要する必要材料の不足の ためにこの活動を停止せざるをえなかった。男性にコンドームの使用を勧め る事は女性の妊娠を少なくするのみならず、HIV感染を含む性感染症を防ぐ 事ができる。

2. 生存出産100人あたりに対する死 産率は1998年の2.6%に比べ、1999年には4.6%に増加した。妊婦による妊娠 期間中の通院頻度を増やす事の奨励、妊婦へのより良い栄養食物の提供(栄 養補給給食)、母子保健専門看護婦や伝統助産婦のための再教育講習は最も 重要である。

3.1999年、妊娠期間中の検診のために診療所訪れた妊婦は平均して1人当 たり1.5回であった。この数字は母子保健専門看護婦や伝統助産婦を動員し て、流産、死産、妊婦の死亡、早産、未熟児の出産を防ぐために妊娠期間中の 検診の重要性についてもっと積極的になるよう指導する事により改善する事 ができる。

4. 出産時のBCGとポリオ─ 0の予防接種適応範囲は非常にうまくいっている。DPT/ポリオに関する予防接種 はDPT/ポリオ1の107.3%からDPT/ポリオ3の74.3%へ減少し、これは DPT/ポリオに関する予防接種の全課程を完了する事の重要性を母親達に説 得する価値がある。これはより良い成果を上げるために関係者全員のもっと 積極的な参加が必要である事を示している。1999年には両キャンプ,特にア リアデ(麻疹予防接種適応範囲:67.7%、ホルホル:76.6%)で麻疹の小規模では あったが急激な発生があった。

5. 6ヶ月から60ヶ月の全ての子ども達に6ヶ月毎にビタミンA剤の配布は 胃腸炎、急性呼吸器感染症、麻疹、皮膚炎及び夜盲症、乾燥症、眼球乾燥症 (全身的ビタミンA欠乏による)、角膜軟化症、角膜潰瘍等の眼疾患の流行に よる疾患や死亡率を減少する事に役立っている。この結果からもビタミンA 剤配布の活動は難民キャンプで定期的に実施されるよう奨励されるべきである。

6. 栄養補給のための給食は難民キャンプで激増している体重不足や発育障 害のある子ども達、弱者グループへの栄養補給の必要性を考慮に入れて見直 しされるべきである。既述されているように、5歳以下の子どもの栄養状態 に関する調査が1999年2月に行なわれ、この結果は別に報告されている。

7. もっと積極的な活動を目標としているマラリア、結核、HIV感染を含む 性感染症等に関する疾患はキャンプでこれらの疾患の流行を押さえるために も独立したプログラムが必要である。

8. 難民キャンプで小規模の検査設備の必要性が長い間望まれてきた。これ は結核やマラリア等の病気を追放するために簡単な検査を可能にする事がで きる。血液検査、検便、検尿、喀痰分析及びその他の簡単な分泌液の検査等 もする事ができる。この設備がキャンプにあれば難民達は簡単な検査のため に遠くの病院へ行く必要もなくなる。他病院への紹介や不必要な投薬を軽減 する事ができる。より迅速に的確な診断をする事ができる。彼等自身が難民 であるキャンプ診療所の2,3人の医療従事者をこれらの簡単な検査をするた めに訓練し、それにより診療所でよりよいサービスをする事ができるし、難 民が本国へ帰還後彼等自身の生活やよりよい医療サービスのために役立つ事 ができる。

9.公衆衛生活動や個人に関する衛生問題、水や食品のための衛生、及びごみの処理(生活ごみ、人間の排泄物)は下痢を伴なう疾患や回虫浸潤の大流行 を減らすためにより力を入れるべきである。適切な水の消毒や家庭用飲料水 の塩素消毒の観察は絶対に必要である。

10. マラリアの大流行を防ぐためにキャンプ内での蚊の殺虫剤等の入手が必要である。

16. おわりに 

 最後に、ジブチ政府、厚生省、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)、ONARS(難民及び被災民のための国民支援機関)、WFP(世界食糧計画)、UNICEF(国連児童基金)、UNESCO(国連教育科学文化機関)、WHO(世界保健機関)、UNDP(国連開発計画)、UNFPA(国連人口活動基金)、非政府団体の全関係者に難民の福祉のために優れた努力をされた事を心からお礼申し上げる。アリアデとホルホル難民キャンプでの効果的な医療サービスを提供するために、年間を通してAMDAを支援し協力して下さった上記関係者の皆様に大変感謝している。

IDRB(国際開発及び救済協会)からのユージン・ムーア医師とその医療チーム、アドヴェンテストヘルスセンターからのJesse F. Agra医師とGuillaume Mulenga医師、Al-Ibrahim財団、Al-Basarインターナショナルからの医師、及びSurya Narayan Shah医師の皆様方が外科、口腔衛生、眼科、産婦人科等専門分野において支援して下さった事にも心から感謝申し上げる。

ペルチエ総合病院、ダル・エル・ハナン産婦人科専門病院、ポール・フォーレ結核センター、アリサビエ地域病院、及びアリサビエ結核病院からの支援は欠く事ができない。私達は今後もこれら支援の続行と私達共通の人道援助の努力に関し関係者全員から協力頂けることを期待している。




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