カンボジア

村の人々の声
2004年2・3月インターン  関  剛志・熊谷 知子
     
AMDA Journal 2003年 8月号より掲載

ヘルスボランティアのインタビュー

プノペン特別市にあるAMDAカンボジアクリニックを拠点とし、国道4号線を西へ約60kmの コンポンスプー州において、『保健医療サービスと保健教育を通じたコミュニティー開発プロジェクト』 を実施しています。このプロジェクトは、地域住民が「自分の健康は自分で守る」ことを目標としており 、地域住民への巡回診療と併行して、地域保健ボランティアの育成を行なっています。
 保健医療サービスと保健教育を通じたコミュニティー開発プロジェクトにかかわるさまざまな人々の 声を紹介します。
 まずは村で活動している地域ボランティア:AMDAヘルスボランティア(以下AHV)と村の人々の声です。

タン・スロラヴ村

AHVのティム・ソパルさん(男性)とソウン・ぺヴさん(女性)に聞きました。

「私たちはAMDAのボランティアとして、村の人たちに保健に関するさまざまな情報を提供できることをとて もうれしく思います。村では主に保健教育を実施したり家の清掃キャンペーンを行ったりして村の保健を向 上させるための活動を行っています。村人の中には直接の援助に頼ることなく、自分たちの力で発展を実現 していこうという私たちの目標に賛同してくれない人もいますので、今後はミーティングを開いたりして理 解を広めていくことも課題のひとつです。この村の収入は未だ低いレベルにとどまっていますが、村長が公 正な人柄なので村全体がとてもよくまとまっています。村を発展させるためにはまず私たち全員が正しい保 健知識を身に付け、健康を維持できるようになることが必要です。来年度はさらに村の保健が向上するよう に活動していきたいと思います。」

村人のヨウン・モウンさん
(41歳女性、3人の子どもがいます)
ヘルスボランティアワークショップの様子

「AHVの行う健康教育には毎回参加しています。ここで初めて下痢やマラリアの予防法を知り、村でもそう した病気にかかる人が減りました。ぜひこれからも続けてもらいたいと思っています。
 生活の中で困難なことは、水が足りないことです。村には2つ井戸がありますが、乾期には水が足りなく なるのでマーケットで買っています。また乾期は農作物を育てるのも大変です。でも村の人々はとても親切 で仲がよく、例えば誰かが病気になったら助け合って病院に運ぶなど、昔から協力しています。」

プレイ・チティー

AHVのキエヴ・チャンタさん(男性)、ケオ・ケムさん(女性)、ベット・ノエムさん(女性)からの声

「私たちは村の健康問題を改善し、貧困をなくしたいと思ってAHVの活動に参加しました。村では主に家の 清掃キャンペーンや、病気の予防・衛生、栄養などテーマ毎の保健教育活動、子供の体重を量り、栄養状態 を確認する活動などを行っています。AHVはボランティアの活動なので収入を得ることは出来ませんが、村の 問題を改善するために今後とも続けていきたいと考えています。村人全員がAHVの活動に協力的なので活動 が滞ったりすることはありませんが、私たちの知識はそれほど多くはないので、思うように情報を伝えられ ないなどの難しさを感じることもあります。来年度はさらに村の保健問題を改善できるように保健教育を充 実させたいと思います。また、水を確保するためのため池を作りたいのですが、自分たちでは資金を準備で きないのでAMDAに支援してもらえると助かります。」

 次は村長のブラック・ボウンさん(69歳男性、妻と二人暮し)です。

「AMDAやAHVの健康教育が始まってから、村の人々の意識が変わってきたと思います。下痢やマラリア、チ フスなどの原因を知って、予防できる病気もあるということが分かりました。行動を変えることはそれほど 難しくないと思うのですが、例えば乾期には水が足りず水浴びが思うようにできないなど、村の環境がそれ を難しくさせていることがあります。
 巡回診療は村の障害者や貧困層、高齢者が心待ちにしています。ぜひ続けてほしいです。この村は 保健センターまで遠く、バイクタクシー代が高いから行けないという人も多いです。けれど自分たちで健康 を維持していくためには、AMDAやAHVの健康教育をもっと頻繁にやってもらえると嬉しいです。」

クラン・スレイ村 AHVのチア・ロムさん(女性)、プラック・ぺヴさん(女性)、ケオ・ラヨウさん(女性)からの声です。

「村の健康問題を改善することで村を発展させ、この国が貧困から抜け出せるようにしたいと考え、AHV活動 に参加しました。村では貯金グループの運営をしたり、清掃キャンペーンを行っています。また、保健教育 は毎月実施して村民の保健知識を向上させるように努めています。現在では他のNGOの支援も受けて簡易ト イレを設置したり道路を整備する作業も行っています。活動を通じて村の病気を減らし、衛生状態を改善で きることはとてもうれしいことだと感じます。来年度は5歳以下の子供にも教育を行えるように幼稚園を建 設したり、全ての家にトイレを設置したいのですが、そのための資金援助を受けなければ実現することは難 しいと思っています。」

村人のスス・ハイさんは妻と3人の子どもと両親との7人暮らしです。左手に萎縮がある障害者で巡回診療に いつも来ています。

「巡回診療は2001年に初めて行ってから毎回行っています。去年は3回行きました。診療が来ないときはバイ クタクシーでプライベートクリニックに行っています。保健センターは行っても閉まっているので行かなく なりました。なので巡回診療はとてもありがたいです。だいたい左手の神経痛と胃炎があるのですが、私は お酒もたばこもしないし、巡回診療で言われるように水は沸かしているし栄養もとっているので、なぜ胃炎 があるのかは分かりません。子どもは時々皮膚炎になります。
 生活の中で一番嬉しいのは家族が健康なことです。乾期には水が足りないなど大変なこともありますが、 村の活動をもっと活発にしていければと思います。」

次に、このプロジェクトを運営しているAMDAコンポンスプー事務所スタッフに一言ずつお願いしました。

コンポンスプー事務所スタッフ

まずはAMDAカンボジアでの事業に10年以上かかわっていて、今年からアシスタントプロジェクトマネージ ャ−を任されたクル・サルーンさん。

「今年の2月にAHVへのワークショップを実施しましたが、前回に比べて AHVの人たちも積極的に参加するこ とができるようになりました。最初のワークショップでは自分たちの村の問題点を発見することから始めな ければいけませんでしたが、今回は保健教育や清掃活動など村で行ってきた活動を、模造紙に書いて発表し たり、ロールプレイの形で振りかえったりして、1年間の成果を確認することが出来ました。今年度はAHVや 村の人々とともに、さまざまな要望をどうやって実現するのか、その方法を考えていきたいと思います。」

巡回診療を担当している医師のDr.ムスリム。

「巡回診療の活動では村に行く前に、年間のスケジュールを作ってからコミューンオフィスを通して村人に 日程などを伝えることも重要な仕事です。どのような人が多く患者として来ているのか、どのような疾患が 多いのかなどの情報からも、村での健康に関する問題を知り、取り組んでいけたらと思っています。巡回診 療をしていて難しいのは、薬に頼ってしまう人が多いことです。しかし障害者の神経疾患や高齢者のリウマ チ性疾患など慢性的なものや、日常の生活改善で予防、ケアできるものなども多く、巡回診療が今年度で終 了することからも、自分たちで何が出来るか考えてもらえる方向にサポートできればと考えています。」

保健教育を担当している看護師の ソッカライさん。週末はプノンペンの大学で医学を学ぶ勉強熱心な青年です。

「日常の活動では主に村と小学校での保健教育を行っています。昨年1年の活動を通じて、人々が村での病 気が減ったと話してくれることはとても励みになります。村ではしばしば健康に悪影響を及ぼす習慣や誤解 があり、それをひとつひとつ説明して正しい情報を広げていくには時間がかかりますが、活動を続けていく 中で少しずつ人々の意識や習慣も改善されつつあると思います。今年度は情報の届きにくい、国道から遠く 離れた村や小学校でも保健教育を実施し、健康問題が改善されるように活動していきたいと思います。」

11月からスタッフに加わったアイさんは、以前からパートタイムで巡回診療に協力していました。

「地域開発に携わりたいと思ってAMDAのスタッフになりました。村の障害者とその家族を、AHVを中心にコ ミュニティでサポートしていけるよう ‘患者家族カルテ’を作っています。彼らのことをもっとよく知り 、より多くの人をサポートしていきたいです。」

事務所にはさらにガードのMr.チョーンと、彼の奥さんで清掃・料理担当のソックホーンさんがいます。カン ボジアでの活動には安全の確保がまず必要です。また、スタッフが事務所でスムーズに気持ちよく仕事を進 めるために、清掃などの支えも大切な役割です。

最後に、フィールドコーディネーターの潮田裕美さんからの声をどうぞ。

「AHVの活動が始まって1年になりました。彼らもはじめは、言われて奨められて活動する、という部分があ ったと思うのですが、だんだんと自分たちでやろうとする気持ちが出てきたのを感じています。AHVさんが 、こちらが何を言ったわけでもないのに「こんなことをしたよ」「こんなことを準備しているんだ」と言っ てきてくれたときはとても嬉しいです。
 またAHVさんと同時に、スタッフの頑張りというのも大きなやりがいを感じるところです。他のNGOの活動 と比べられることも多い中で、AMDAのポリシーをもってAHVの活動を推進し、結果として村での健康促進活 動につながったときには、彼らスタッフがよく頑張ってくれたことを大変誇りに思います。
 一方で、活動においては難しいと感じることもあります。例えば、支援の対象者は、よく「自分たちは貧 しいから」と言います。その先には「だから支援されるのは当然」という考えがあるのかもしれません。そ のような考えが少なからずある中で、彼らの持ちうる資源でも状況を変えていけることを伝え、方法を提案 し、実行に移していくことは、なかなか大変なことなのです。
 嬉しいことや大変なことがダイナミックな現地ですが、今後もAHVを通して、コミュニティの人々が健康に 関心を持ち、自分たちでも健康を守っていけるんだ、ということを分かっていってもらえればと思います。」

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【関 剛志さん】

2004年2月中旬から3月下旬にかけ、AMDAカンボジアコンポンスプー事業インターンとして活躍。現地スタッ フとともに、保健衛生状況分析の補佐、それをもとにした保健衛生教育の内容構成提案などを実施。 中央大学4年生

【熊谷知子さん】

 2004年2月上旬から3月末にかけ、AMDAカンボジアコンポンスプー事業インターンとして活躍。現地スタッ フとともに、2003年度巡回診療患者の傾向分析補佐、それに基づいた村レベルでの活動提案などを実施。 慶應義塾大学4年生
巡回診療時に血圧を計る熊谷知子さん
■ ご協力ありがとうございました

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<将来への大きな経験になった−関 剛志>

私は大学で主に国際関係や地域開発援助について学んでいますが、人々の生活を改善するときに第一に大切 なのはその人々の健康状態を良好に保つことだと考え、その実践を学ぶために今回のインターンシップに応 募しました。コンポンスプーでのインターン期間中には、主に保健教育という活動を中心に参加させていた だきました。これは主に農村部において、例えば病気の予防法や対処法、地域の医療機関の使い方など、保 健に関する基礎的な情報を人々に提供することで、健康問題の改善を図る活動です。ただ、私には現地の言 葉は分からないので、活動の現場ではほとんど何も出来なかったのが実際だと思います。意思疎通のための 言葉の大切さを改めて感じるとともに、今後の自分の役割を模索する上で大きな経験になりました。
 オフィスでの仕事では、年度末の活動報告をまとめる作業を手伝いましたが、書類の形式や考察をめぐっ て、時には担当スタッフと衝突することもありました。それでも作業を通じてお互いを理解し、仕事を作り 上げていく過程はとても楽しく感じられました。

カンボジアは人々も穏やかで親切な印象を受けましたが、国家規模での発展を実現するためには未だ多くの 課題が山積していると思います。期間中知り合った人々の顔を思い浮かべつつ、彼らが少しでも明るい未来 に進めるよう、これからも自分に出来ることを探していきたいと思います。ありがとうございました。

<活動に参加して学んだこと−熊谷知子>

活動を見て感じたのは、
・AMDAでは、アンロカ行政地区保健プロジェクトのように、保健行政区の運営全体から担うアプローチと、 コンポンスプー州でのプロジェクトのように、末端の保健センターまで十分な資金が渡っていない地域にお いて、AHVを通して、コミュニティの人々が自分自身で健康を守っていけるようにするという草の根からの アプローチの、両方の活動を行っているのが興味深い。
・どんなアプローチにしても、最終的には、支援がなくなっても自分たちでやっていこうということを皆が 目指して取り組むことが重要であり、同時に難しい部分であるということでした。
 実際に活動に参加させて頂き、書物からだけでは分からなかった、プロジェクトの動き、状況、課題、そ してAHV や村の人々の暮らしなどを目の当たりにし、またカンボジアでの様々な国際支援についての話も聞 く中で、「国際協力」だからといって全てが良いわけではなく、本当の意味で良い活動を行っていくには、 何を目的に、どのような方法で、何を達成基準に、どのような活動をしていくのか、を常に頭に置くこと、 またそれらを支援者も注意深く見ていくことが大切だと感じました。
 2ヶ月間、本当に様々なことを学ばせて頂き、どうもありがとうございました。

【海外参加研修(短期インターン)とは】

職業経験のない学生、もしくは新卒者が、国際協力や人道支援活動などの分野に関心を持ち、限られた期 間内で海外の活動に参加したいということを主たる目的として応募した場合、事業側の受け入れ体制を最大 限考慮し、体験学習(=活動参加)者として派遣する。原則として1ヶ月以内の派遣又は3ヶ月を越えた派遣 は考慮しない。一部経費を負担いただいている。
詳しくはAMDAホームページ参照
http://www.amda.or.jp/recruitment/recruitment01.htm

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