カンボジア

コンポンスプー州での
保健衛生教育強化プロジェクト


AMDA本部職員 吉見千恵
AMDA Journal 2002年 10月号より掲載

これまでAMDAはカンボジアにおいて、AMDAカンボジアクリニック(ACC)の運営、巡回診療、トレン・トレジュン小学校(元チャンバック小学校)の支援という3つのプロジェクトが展開されている。 この中の巡回診療を基盤に、住民の方々に対する保健衛生教育を本格的に始動させることになった。以下現状と事業の目的、そして展望などに関して報告する。

1. 現状

巡回診療はコンポンスプー州のプノン・スルイ地区に住む主に障害者の方を対象に行なわれている。 火曜日と木曜日の週2回、プノンペンのACCから約2時間かけて、あらかじめ予定されているコミューン(共同体)に赴き、無料で診療を行い薬を処方している。

チームは医師のDr.Viseth、看護婦のレアック、ドライバー兼アシスタントのサンボさん、そしてヘルスボランティア1名と地区政府からアシスタント1名で構成されている。 現況の問題点は、

  1. 週2回のペースで約30-35箇所(対象地区拡大中)を回るので、同地域に再度訪れるのが約3ヵ月後になること
  2. 無料であるため、軽症であっても医師にみてもらおうと人が集まり、本当に診療を必要としている患者に対し十分な診察時間がとれないこと

である。

2. 事業の目的

こうした問題点をふまえ、予防できる疾病や、軽症に対処する方法について学んでもらおうとするのが今回の保健衛生教育の内容である。 単なる知識の押し付けではなく、自分たちのできる範囲で自分たちの健康を守るという考え方を持ってもらわなければ、効果的な教育にはならない。

途上国がより豊かに、より自立した国になるために支援するという我々の活動を「開発」と呼ぶが、保健衛生教育は現在の開発の流れと一致する。 少し前までは貧しい途上国の人々なのだからと、食糧を無料で配ったり、薬や医療を無料で配布する慈善が善いこと、当然なこととされていた。 近年ではそうした人々が外部の援助を受けるだけでなく、援助がなくても生活していける、つまり自立していくための支援を行なうべきである、という流れに変わってきている。

欲を言えば、当事業は長期で計画しているが、将来的には全ての援助をなくしても地元の人々の健康が適切なレベルで保たれる環境が維持できるようにすることが目標である。

3. アプローチ

住民主体が基本である。AMDAがすべての住民を対象に直接教育を行なうのではない。「自分たちの健康は自分たちで守る」という原則の下、住民による地区の保健衛生状態向上というアプローチをとる。 まず各地区から適切な人材を見つけ出す。家族の健康を預かる立場にいるのは基本的に女性であり、かつ妊娠という特別な注意を払うべき時期を経験するのも女性であることから、人材は女性がふさわしいと考えている。 またAMDAが選ぶのではなく、できるだけ住民自身に選んでもらう。これはこうしたプロセスを経ることにより自分たちが事業に参加しているという自覚をもってもらい、また「自分たちの健康を守る」ということに積極的な意識を持ってもらうためである。 こうして選出された人々に保健衛生教育を行い、彼女らにヘルスボランティアとして各地区住民の健康問題に取り組んでもらおうというのが全体の流れである。

効果的な活動のためには、政府機関との協力も欠かせない。 NGOや国際機関など、外部の団体が途上国で活動をするに際し、地区政府やコミューンチーフなどの有力者とよい関係を保ち、またすでに存在しているネットワークなどを上手に活用することは非常に重要である。 この点に関しては、今まで巡回診療を3年間行なっていた甲斐があってか、地区政府のトップや、コミューンチーフなどとは、非常によい関係がすでに築かれている。 行政長をはじめ、何人かの人々に会ったが、AMDA の新しい活動に対して積極的な協力を惜しまないというお墨付きをもらうことができた。 また、診療先の住民の方々の信頼も厚く、その中でもヘルスボランティアとして活躍してくれそうな、地域の面倒をみる能力がある人を何人か見つけ出しており、今後こうしたネットワークを活用していく予定である。

先述の「開発の流れ」で言うと、国際機関やNGOが村に入っていって、自分たち流のやりかたを押し付けるのではなく、地元の人々をできるだけ巻き込んでいくことが重要視されている。 AMDAカンボジアはこの面でもハードルをクリアしていると言える。

4. 当面の目標

保健衛生教育事業を始動するにあたり、2003年3月までは最も効果的なスタイルを探るため、試験的にいくつかの方法を試してみる予定である。 当面の目標として地区政府機関と協力し9月末までに2回の保健衛生教育を行なうことが決定している。(財団法人女性のためのアジア平和国民基金による支援)

5. 展望

AMDAカンボジアのスタッフの技量と、彼らの地区政府やコミューンリーダーそして地区住民との非常に友好な関係を知るに連れ、当事業の展望は明るいと感じている。 また現地スタッフと日本人調整員の間で何度も協議を重ねるうち、スタッフ間でこの事業の内容とアプローチについて合意を形成することができた。 事業の効果を挙げるために、チームワークもまた欠かせない要素のひとつである。

カンボジアはすっかり援助慣れしてしまっている。10年前に内戦が終了して以来、カンボジアには何百という国際機関やNGOが入って活動を行なってきているが、そのやり方には首をひねりたくなるものもある。 住民を集め、形式だけでもトレーニングを行なったように見せることは簡単である。参加者にお金を配ればよい。これは多くの国際機関やNGOが実施するトレーニングでは、当然のように行なわれている。 即効性を上げるためという意味では、こうしたやり方も一理あることは否定できないが、AMDAカンボジアがこれからやろうとする事業では、できるだけこうした面を最小限に留めようということで、現地スタッフと日本人調整員の間で合意している。 見かけではなく「質」を求めようとする姿勢は、現地ディレクターであるDr.Rithyが最も強くもっており、こうした意味でも手間や時間が掛かっても、よい事業にしようとするチームの士気は高い。

6. その他

新規事業のため新事務所をひらく必要があり、プノン・スルイ地区で事務所兼住居探しを行なった。作業はいたってシンプル。 ふさわしいと思われる建物を見つけると、車をとめてその辺の人に「この建物は貸し出しできるか」と尋ねる。貸してもいいとなると、全然知り合いでもないのに、とりあえず「入れ」と中に入れてくれ、建物の隅々まで見せてくれ、設備や家賃についての話になる。 家主が先頭に立ったり、日本人が珍しいのか子どもたちが嬉しそうに案内してくれたりする。床で寝ている家人は「客がきたから」とたたき起こされ、突然の客である我々に座る場所を提供してくれた家もあった。 カンボジア人はとても人懐っこいと、ガイドブックなどには書かれているが、それが本当であることを実感した。 結局スタッフの間で1番最初に見つけた家が場所的にもサイズ的にも一番よいということになり、そこの大家さんと交渉し契約までこぎつけた。 慣れぬ土地に住むのに大切なのは信頼できる人を捜し当てることであるが、地区全体が貧しく100%安全とは言えないプノン・スルイでは、この原則がよりあてはまる。 その意味でこの大家さんは何度か会ううちに信頼できる人だということがわかり、新事務所開設にあたり、幸先の良いスタートをきれたことを嬉しく思う。 建物の図体は大きい。地元の人との信頼を築いていく上で、サイズに合わせた活躍をしてくれることを願う。




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