ボリビア

AMDAボリビア活動報告

AMDAボリビア支部
調整員 Claudia Mercado
AMDA Journal 2002年 9月号より掲載



 ボリビアの人口は現在850万人で、年間成長率は2.8%である。2020年までにその数は1640万人に到達するものと予測されている。 年率4%の割合で都市化が進んでおり、1976年に総人口の4割であった都市人口は、現在6割に達している。

 ボリビアの識字率は81%で、公用語はスペイン語、アイマラ語、及びケチュア語である。都市部では9割の子供達が小学校へ入学するが、卒業できるのはその約半数である。 農村部においては、小学校入学者が5割で、その後、学業を続けられるのはさらにその半数である。

 ボリビアは中南米諸国の中でも最も貧しく、開発の遅れている国の一つである。錫(スズ)や綿価格の世界的な下落と極度のインフレ(1984年の26,000%)が経済を破壊した。 1985年に始まった大胆な改革により、経済は安定した。しかし、依然として失業率は高く(25%)、一人当たりの年間所得は500ドルを少し上回るに過ぎない。 今日、総人口の5割は貧困層、さらにその4割は最貧困層である。

 幼児死亡率は非常に高く、1,000人中89人は一歳の誕生日を迎えずに死んでしまう。また、5歳までに死亡する幼児の数は1,000人中126人に達する。 妊産婦の死亡率は南米諸国の中でも一番高く、10万件の出産中600人の妊産婦が死亡している。

 ボリビアは9県から成るが、ラパス県は最も人口密度が高く、サンタクルス県がそれに次いでいる。現在、サンタクルス県の都市化は年率6.11%で進み、9県の中で最も高い成長率を記録している。 サンタクルス県の県庁所在地はサンタクルスデラシエラ市である。この都市は1976年から172%を上回る著しい人口増加を記録している。 同市の現人口は130万人を超えており、2010年までには150万人を超えると予測されている。

 サンタクルスデラシエラ市はボリビアの中でも、最も交通事故の多い都市の一つに数えられる。 しかしながら、交通事故やその他の緊急医療事態に対して、病院に到着するまでの救急医療体制は皆無である。 病院の多くに救急車はあるが、十分な医療器具を備えているものは少なく、救急訓練を受けたスタッフが同乗しているものとなると数えるほどしかない。 たいていの場合、救急車は患者を事故現場から病院まで搬送するだけで、その間に応急処置をほどこすことはほとんどない。

 こうした状況を改善するために、1990年にEMGRUP(Grupo de Asesoria y Preparacion para Emergencias: 救急救命対策協会という意)というNGOが設立された。 このNGOの主な目的は:
  1. 医療従事者、警察官、消防士などに、病院前救護や救急治療室での訓練を実施する
  2. 国家緊急対応計画をより進展させるために、ボリビア政府の協力を促し支援する
  3. 他国のNGOと協力し緊急時の対応プログラムを支援する
ことである。


緊急救命医(士)養成セミナー:患者の初期評価方法の講習
緊急救命医(士)養成セミナー
患者の初期評価方法の講習
 1994年、日本の徳島大学に留学中のボリビア人医師Ever Escobar氏がAMDAインターナショナルへJorge Foianini医師を紹介した。 Foianini医師は1994年10月20日から26日まで日本で開催された第一回緊急救援フォーラムへ招待された。このフォーラムで、氏は菅波茂、Francisco Flores両医師と出会った。

 両医師はFoianini医師と今後のヘルスケアプロジェクトのパートナーを組めると考えた。 そしてFoianini医師は母国の医療ケアを改善するための溢れるようなアイデアとプロジェクトをボリビアへ持ち帰った。 サンファンデラディオス病院で医師、看護師、医学生の指導経験の持ち主で、熱意ある一般外科医Gonzalo Ostria医師の助力が、この動きに拍車をかけた。 Oncological Institute(腫瘍学専門研究所)で活躍していたもう一人の一般外科医Gonzalo Aviles医師も地元医師らと共に活動に加わり、医師、看護士、警察官、消防士、及び民間人の訓練を含むプロジェクトをEMGRUPとして本格的に開始した。

 1996年12月、EMGRUPはAMDAボリビアの設立を正式に要請した。 AMDA本部は、この要請を1997年1月21日に承認し、Foianini医師をAMDAボリビア代表、Ostria医師を副代表に任命し、それ以後両医師は看護師、医師、民間人、消防士、SAR(Search and Rescue)グループ、公園警備隊員、警察官等数百人の人々の訓練、CPR(心肺機能蘇生)やBLS(基礎救命)研修の実施に励んでいる。

 AMDAボリビアはサンタクルスのSISME(Integrated System for Emergency Medical Services: 救急医療サービス統合システムの意)プロジェクトチームの人材育成にも大きな役割を演じている。 AMDAボリビア代表のFoianini医師は2年間一緒に仕事をした後、SISMEの理事に任命された。

 ボリビア外科協会より任命されFoianini医師とOstria医師がそれぞれ理事、副理事を務めるボリビア外傷委員会は、米国外科大学よりATLS医師研修プログラム(一般医を対象とした外傷に対する初期治療の技術向上を図る研修プログラム)をボリビアに導入しようと試みた。 そして多くの困難を乗り越え1997年5月12日に覚書に署名することができた。このプログラムはAMDA本部から経済的支援を受けている。 プロジェクト実施から4年間の間に391人の医師と35人のATLS指導者を養成した。

 2001年、EMGRUP-AMDAボリビアはPHTLS(Pre-hospital Trauma Life Support)コースも開始した。 これは、事故現場から病院へ外傷患者を搬送する段階で実際に必要な技術を学ぶための教育プログラムである。ボリビアには、救急救命士が存在しない。 事故現場で外傷患者に接するのは医師、看護師、救急車の運転手、公立および個人病院の救急車関係者である。

メーキャップした模擬患者の外傷初期診断講習
メーキャップした模擬患者の外傷初期診断講習
 これらの人達は外傷患者の取り扱いについて全く訓練を受けたことがなく、病院へ到着するまでに多くの人(ほとんどが青少年)が命を失ったり、合併症等で苦しむことになる。 医療関係者の研修は非常に大切であるが、彼等の収入は低く研修を受けるための登録費を支払う余裕はない。 このコースは米国から取り寄せたものであるため、費用がかかる。しかし、AMDA本部の支援により、昨年3月のコース開始以来、病院前救護において142人の医療従事者を訓練することができた。

 ボリビアの医療社会が、少しずつこうした研修を続けることの大切さに気づき、また、地域の福祉向上に役立っていることに対し、私たちはとても満足している。 深刻な経済危機に直面している今日でも、一般的に病院や診療所は、上記研修コースを受けたことのある人材については、新たに雇用しているということである。 ATLSとPHTLS両プログラムは欧米諸国では普及しており、私達が医師に授与する証明書は世界的に認知されている。

 日本病院(通称: 日本の無償資金協力で建設)から参加していたPHTLSとATLSプログラムの研修生の一人は次のように話す: 「これらのコースを受けるまでは事故現場に直面した時、外傷患者の取扱いに戸惑ったものだ。救急救命知識が無いために、度々患者の状態を悪化させていたかも知れない。 ボリビアでは、交通安全教育が十分でなく、また、飲酒運転者が非常に多いため、一番多い外傷は頭部の外傷と複雑骨折である。 この2つのコースをセットとして研修を受ければ、優先事項に基づき、自信を持って患者の対処をすることができる。 今では、より効率的・効果的な救急救命活動を行っていると言っても過言ではない。」

(翻訳 藤井倭文子)




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