バングラデシュ

島々に住む人々を支援する
バングラデシュ貧困削減プロジェクト


AMDA本部職員 岡安 利治
AMDA Journal 2002年 10月号より掲載

はじめに

バングラデシュに初めて赴いたのが、1999年12月、今回は2年7ヶ月ぶりの渡航となった。AMDAが1998年から貧困削減事業として活動を継続しているのは、首都ダッカから約30km、Gazaria Thana(ガザリア郡)である。 「首都から30kmで島などあるのか?」もっともの疑問である。以前訪れた時期はちょうど乾季だった。 参加型開発で有名なロバート・チェンバース氏は、「活動視察は通常、アクセスが容易な乾季になることが多く、本来の貧困層の状態が見えづらい。」ということを言っていたが、私もあえて乾季を選んだわけではないが、前回はそうなっていたのかもしれない。 今回、2002年7月から8月、まさに雨季の真っ只中である。プロジェクトサイト近辺に見られた河原は、前回、道路から100m以上もあったのに、今は道路際まで川が迫っている。 乾季には大きな中州であった村々は完全に孤立した島になっている。村人の交通手段は船だけである。電気もない島(中州)が多い。ガザリア郡に初めてAMDAが入ったのは1998年の洪水被災者に対する緊急医療支援である。 そして日本大使館の草の根無償支援を受け、洪水復興支援として家々の修復、井戸・トイレの設置を行っている。 AMDAでミャンマー難民・ソマリア難民・ルワンダ難民支援とアフリカで活躍してきたバングラデシュ人スタッフ・ラザック氏が祖国バングラデシュに戻って、このガザリア地区でマイクロクレジット(小規模融資)事業を中心に展開してきた。 マイクロクレジットの詳細は、過去のAMDAジャーナルにたびたび紹介されていると思うので詳細は書かないが、担保をもたないため、また都市経済から離れた生活をする貧困層を対象に低金利の融資をして、彼ら(彼女ら)の自立支援を図るプログラムである。

1999年12月

1999年12月、AMDA本部は、このマイクロクレジット事業を支援するため、資金の調達に努めたが、困難に直面した。 世界的に有効な貧困削減手段の1つと言われつつも、日本のドナーのほとんどは、日本のNGOに対してマイクロクレジット資金を提供する制度をもっていなかったからであった。 AMDA本部としても支援者からの浄財で成り立っている以上、「マイクロクレジットに使ってほしい」と言われない限り、資金を割くことは難しかった。 本部からの定期的送金を期待し、メンバーを増やしつつあった現場と資金調達に困難を抱えた本部との間に横たわるジレンマに、今後どうしていくのか、それが前回のミッションのテーマだった。 メンバーの集会に出席すると、初めてAMDA事業に怒っている受益者に対面した。メンバーは通常融資を受ける前に一定額の貯金を義務づけられる、そうした経緯もあり、「メンバーになったのに、いつになったらAMDAは融資をしてくれるのか?」融資を待たされている村々の女性は不満を、私にぶつけてきた。 メンバー1400名に対して当時400名ほどしか融資をすることができなかったのである。実際に用意できたプロジェクト資金に対して、メンバーを現場側で増やしすぎてしまったのである。 とりあえずこれ以上、メンバーを増やすことをやめ、積極的にマイクロクレジットを支援してくれるドナーを捜すことに力を入れた。

2002年7月

あれから2年8ヶ月、最上稲荷明恵会中島上人からの寄付、通信販売の売上を社会貢献支援してくださる(株)フェリシモから2度の助成、AMDA派遣医師であった寺村医師からの寄付、Shoji Masajiさん、その他多くの皆様からの寄付を元金として、1368名(2002年7月現在)の受益者が融資を定期的に受けている。 彼女らは1度の融資でなく、2回、3回、4回と融資を受けている(回ごとに融資額が増額されていくシステムを採用)。今回、融資の対象者である女性たちは口々に「AMDAマイクロクレジットメンバーを継続して、今後も融資を受けたい。」「土地を買うことができた。」「店を拡大できた。」と満足そうに語る。

雨季の島々へ

島々に渡る船は個人が運営する船で、拠点になるホッションディ村市場から、だいたい片道2タカ(4円)程度である。市場には隣接して小学校、中学校、高校、銀行(銀行と呼ぶにはお粗末であるが)、政府の診療所などがある。 AMDAの活動拠点は、この市場に1つのマイクロクレジット事務所、市場から徒歩5分の場所にAMDA職業訓練センターがある。毎朝、 AMDAスタッフはメンバーとのミーティングに市場の船着場から村々に渡っていくのである。 近いところは5分ほど、遠いところは片道20分ほど船に乗ったあと、歩かなければならない。住民は皆、靴・靴下ははかず、素足にサンダルである。 なぜなら雨季の間はひざ下まで容易に水に浸かってしまうからである。主要な道から家まで一本の竹が渡してあることがある。いわゆる竹橋である。 AMDAフィールドスタッフは、イスラム教の休日である金曜日以外は、船に乗り、竹橋をわたり、毎日どこかで行われるマイクロクレジット集会へ繰り出していく。 舗装された道路は船で渡る島々には存在しない。足が泥まみれになりながら、スタッフは淡々と業務をこなしていく。

フィールドスタッフと島から戻る時、水路が狭まったため定期船でない小さな船をつかった。風がふけば帆をかけ、なければ手で漕いでいく原始的な船である。 突然の雨にビニールシートや傘に包まりながら、岸につくまで約20分ほど辛抱しなければならなかった。雨季といっても1日中、雨が降っているわけではないが、スタッフはたびたび、雨・風に耐えて、仕事をこなしている。 住民に直接かかわる事業をやったことのある方、もしくは日本でもサービス業に従事されている方から想像がつくと思うが、住民の不平・不満を聞きながら、まとめていくのが、このプログラムには必要不可欠で、地道に、忍耐強く、仕事を進めていかなければならない。 がんばっている現地スタッフの姿を見ると、この国の将来に明るい希望を垣間見る気がする。

AMDAバングラデシュ包括的貧困対策

バングラデシュでは、グラミンバンク・BRACといった一部上場企業ともいえるような団体がマイクロクレジットを推進してきたが、AMDAのプロジェクト・サイトは、そういった大手マイクロクレジット団体から取り残された地域を支援対象にしている。 基本的にマイクロクレジット事業は、担保が無いなどの理由によって既存の金融システムから取り残された人々に対しても、低金利で貧困層への融資が行われる。 返済に対するグループ責任が機能すれば融資したお金も十分に回収され、持続的な支援ができる。AMDA の事業サイトはアクセスが悪いため、移動のための交通費(船)がかさみ、スタッフ一人あたりがカバーできる受益住民数が少ないが、金利は他団体に比べ若干低くおさえている。 住民にとってうれしいことではあるが、団体としては持続性への課題がある。経費を押さえ、NGO的要素を含みながら成功しているのが、前述のグラミンバンクやBRACである。 ODA削減やNGO 間の補助金・助成金の取り合いが厳しくなってくるなか、AMDA本部としても現地バングラデシュ支部の自立を望んでいる。できればあと5年以内にはマイクロクレジット元金を増やし、本部からの支援がなくともプログラムが継続できるよう、今年8月、大野伸子氏がこの分野の専門家として長期赴任したところである。

マイクロクレジットのほかに、住民の自立支援を施すために、バングラデシュ日本大使館からの草の根無償資金を使い、AMDA職業訓練センターを建設し、今年6月から裁縫・木工・コンピュータ・電気・溶接それぞれ3ヶ月コースを設けて実施している。 それぞれ貧困層でも手が届き、講師手当分はまかなえるような受講料に設定している。アフリカを中心に、AMDAがマイクロクレジットを開始したころ、マイクロクレジット受益者と職業訓練受益者が同一対象者になるようにすすめたケースが多かった。 しかしながら貧困者の多くは技術がないから、収入を得られるわけでなく、なんらかの技術を持ちながらも原材料を購入する資金がなく、収入向上の機会をえられないケースが多い。実際、こちらからマイクロクレジットは裁縫のトレーニングとしてリンクしているので裁縫ビジネスしか使えないとすると成功するケースが少なかった。 また受講費を無料にすると自分のお金を出していないことから、まじめにとりくまないケースもでてくる。受益者が本当に、身銭を切って、必要だと思って訓練を受けるときに本当に技術が身につくというものである。 現在、木工を除いた4コースは定員一杯でトレーニングを行っている。養殖漁業・養鶏のトレーニングも準備が進められれている。

保健衛生トレーニング
保健衛生トレーニング
また、今後は保健衛生教育を強化するように、スタッフの保健分野でのトレーニングを3日間、今回の滞在中におこなった。 今後は大野氏を中心にさらに保健衛生分野のプログラムが強化される予定である。

最後に

2年7ヶ月の間に、プロジェクトの成長を感じた滞在であった。まだまだ改善するべき点はあるが、着実に進歩しているプロジェクトになってきている。 一度フィールド(村)にどっぷり浸かって数ヶ月間インターンをしてみたいという方はぜひAMDA本部バングラデッシュ担当にご一報いただきたい。

今後もバングラデッシュプロジェクトは対象地区、受益者を増やしていきたいと考えております。持続的支援の可能なマイクロクレジット元金を支援してくれる方のご寄付をお待ちしております。




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