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自立支援のための
小規模融資プロジェクト
S. A. Razaak, Director
バングラデシュAMDA 研修センター(ACT)
翻訳 藤井倭文子
AMDA Journal 2000年 9月号より掲載
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プロジェクトの背景
1998年のはじめにAMDAはバングラデシュに二つの要素を含む計画を促進するためのAMDA研修センター(以下ACTと省略)を設立した。
その一つ目はバングラデシュでABC(AMDAバンクコンプレックス) の概念にもとづく自立支援のためのモデル計画を実施する事。
二つ目はACTを通じてAMDAバングラデシュに小規模融資に関する基礎訓練を提供しAMDAの現地スタッフの能力を培うためである。
ACTは最大の目標に到達するために可能な方法を見つけるため即座に行動を開始した。
その間、ACTは国内及び国際スタッフのためにいかにしてグラミン銀行モデルをもとにした小規模融資を効率良く実施できるかについて、
各自の知識を深めるために数回にわたり研修プログラムを実施した。
バングラデシュにおけるACT教育を通して、私達は自立支援の開発に到達するためのABCの概念にもとづいた小規模融資プログラムを
実施する初めての計画を促進するためにたゆまぬ努力を続けている。
また私達はABCの包括的な目的を満たすため医療(保健衛生指導)や教育(職業訓練·識字教育)などを組み込んだ
“融資と自立支援プロジェクト”を開始した。
私達はABC及びバングラデシュを地盤とするACTでの最近の進展について活動報告をさせていただく。
A. AMDAバンクコンプレックス(ABC)
1996年にバングラデシュで催されたAMDAインターナショナルのビジネスミーティングでABCに関するダイナミックな構想が生まれた。
その構想は非識字で貧しい人々や特に社会経済的に不利な立場にいる女性を対象とした医療、教育、及び貧困にあえぐコミュニティに
おける増収のための広範囲にわたる社会開発計画である。
この様な状況において、AMDAはABCを通して長期にわたる自立支援の計画に踏み込もうとしている。
1998年の始めにAMDAはACTバングラデシュを通してこの計画を実施するための基礎的な活動を開始した。
ABCプロジェクトのための準備方法
1)プロジェクト実施地の選択:
当初ACTが事務所を開設した地域に5ヶ所のプロジェクト実施地が選ばれた。
このうち4ヶ所は農村地帯で1ヶ所は市街地にあるのスラム地区である。
プログラムを実施する前に必要とされる全ての社会的調査を対象地域にて行なった。
その調査は下記の社会経済的な状況を考慮している。
a. 村落やスラム地区(特に市街地の場合)を示す各地域の地図
b. 各地域の主な経済活動
c. 社会的生産基盤及び地域住民の市場への接近のしやすさ
d. 貧困層(最低収入)以下の生活をしている人々の概数
e. 以前のバンクサービス又は他のNGOによる増収のためのプログラムが有るか否か
f. コミュニティによる自発的活動への参加
平成11年度のAMDA本部からの総合的なABC計画の資金源をもとにし、試験的プロジェクトとして5ヶ所の中から3ヶ所を選ぶ運びとなった。
ABC概念にもとづく自立支援のための小規模融資プロジェクトに着手するために資金援助をして下さった日本の支援者の皆様に感謝している。
2)会員名簿の作成
広範囲に及ぶ社会的な流れについて調べるために、3ヶ所の実施地域において増収のために融資を希望している人々の中から、
ふさわしい会員を選ぶため、数回にわたり会合がもたれた。
会員としての基準はグラミンバンクをモデルにした。
各予定地で大反響を呼び多数の人々(特に女性)による会員希望者があった事を強調したい。
会員になるためには、小規模融資システムの基準に基づき融資を受ける前にAMDAに少なくとも3ヶ月、毎週1人あたりUS20セントの
預金をする事から始める。
言うまでもなく、各グループ5人のメンバーを自分達でつくり、そのグループが融資を受けるために必要な条件を全て満たす事が
できれば、各自AMDAの会員になるために50セントの会費を納める。
その期間中に2000年の5月迄に増収を目的とする融資を希望する1020人の会員(204グループ、1グループ5人編成)が集まった。
これらの会員は毎週定期的に開かれるミーティングに参加し、AMDAのプログラム企画者に週単位の預金を預ける。
各メンバーはAMDAに3-4ヶ月の預金を完了すると、はじめて各自はそれぞれの所帯にあった自営業を始めるための融資を受ける資格ができる。
Hosneara Begumさんはバングラデシュのマンシガンジ地区のガザリア· ターナにあるホッサインディ村に住んでいる35歳の主婦である。
彼女の夫 Md.Muslem Kahanさんは42歳で漁師をしている。5人の子持ちで、土地その他の資産はない。
この家族は親戚から借りた土地に竹で作った掘っ立て小屋に住んでいる。
この夫婦は魚の収穫が少ないときは労務者として生計を立てている。
彼は魚網を1枚持っているだけで、漁業に必要な充分な道具がないために収穫が少なく、漁船を借りる事がいつも困難だった。
1999年の初め、AMDAがこの地域に融資と自立のための支援プロジェクトを開始した時、夫人は5人組グループの一会員になった。
その後彼女は1隻の小さな漁船と数枚の魚網を買うために約US$100の融資を受ける事ができた。
50週に渡る分割払いと利息の第1回めの融資を返済後、彼女は2000年4月に約US$160の2度目の融資を受けた。
その間に、AMDAからの融資を投資することにより、彼等の収入は50%増収した。現在の所彼等の月額収入は約US$80-100である。
この夫婦は現在1隻の漁船、3枚の魚網、及び小さな家庭用養鶏場を持っている。5人の子どものうち、3人を学校へ行かせている。
彼等の生活は少しずつ改善されている。
バングラデシュのAMDA融資プロジェクトに参加しているその他のメンバー同様、彼女は近い将来貧困ラインを乗り越えることができると望んでいる。
3)預金者の獲得
小規模融資貸付の中で預金者の獲得が最も重要な事である。これは会員と融資団体の間のよりよい関係をつくる。
他方では、預金に対する態度は収入源と自信の向上につながる。
このようにAMDAは会員に彼等自身の利益のために少しでも多くの預金をする事を強調し小規模融資の開始に踏み切った。
預金は最小限1年の満期をへて、5%の利息を受け取る事ができる。
2000年5月迄に、私達は融資資格を持つ会員からUS$12,832の預金を集める事ができた。
これらの預金は借り手会員のために使われている。毎週私達は預金を集め、同時に新しい借り手を見つけている。
このプログラムの有利な点は、資格のある会員を増やすだけこれら会員から預金を集める事ができるし、
その預金から新しい借り手を生み出す事ができる。
4)融資の実施
1999年の初めから、私達は各有資格会員に着実に融資を実施している。
当初、私達は会員のいろんな分野における投資を考慮して、第1回貸し付け金として1会員US$100を上限とした融資をする事を対象とした。
通常1会員は5回融資を受ける事ができる。融資を受けた金額は50週間以内に毎週定額の分割払いで返済されなければいけない。
各会員は1つの返済が終了後、次の融資を申請する事ができる。
貸し付けシステムにもとづき、貸し付け金の支払時にグループ税として5%を各借り手の融資額(US$100)に課せる。
この金額はAMDAの会員になってから5年後に返済される事になっている。5年以前に脱会するならば、グループ税は返済されない。
グループ税は融資支払のための安心料である。
融資が始まってから約68週間が過ぎた。その間に、借り手は第1回目の融資を50週以内に返済した。
借り手は各自の仕事の向上を目の当たりにし、更なる投資のために2回目の融資を受けようとし、現在彼等に2回目の融資をおこなっている。
2回目の上限額は一人あたりUS$200である。
5)返済
借り手会員は50回の分割払いで、毎週返済しなければいけない。
言いかえれば、借り手は融資金額を利子と共に50週間以内に返済しなければいけない。
毎週各返済金に年間一律10%のサービス料が加算される。現在返済率は100%である。
下表は2000年5月迄の現場におけるABCの現状である。
詳細 |
期間(1999-2000) |
計算書の項目 |
金額(US$) |
備 考 |
一般会員数 |
1,500
(全会員は週単位の預金をしていない) |
入会金の集金 |
535 |
有資格会員の会費は回転資金として使用 |
有資格会員数 |
1,020
(全会員は週単位の預金者) |
預金獲得 |
12,832 |
有資格会員の預金は回転資金として使用 |
グループ数 |
204
(1グループ5人の有資格会員) |
分割払込金の集金 |
49,394 |
借り手からの各週の返済金は回転資金として使用 |
センター数 |
51
(4グループで1センター) |
グループ税の集金 |
4,747 |
融資金額(払い戻し可能)に課せられる5%の税金は回転資金として使用 |
借り手会員数
(1回目の融資) |
778
(全員1回目の融資を受けている) |
サービス料の集金 |
4,362 |
融資金額に課せられる10%の利子は運転資金として使用 |
借り手会員数
(2回目の融資) |
110
(全員2回目の融資を受けた) |
借り手会員総数 |
888
(既に融資を受けている) |
有資格会員1,020人の中。 |
下表は2000年5月迄の現場における回転資金の未払い融資である。
詳細 |
金額(US$) |
備考 |
資本金 |
金額 |
融資の実施(1回目) |
76,560 |
回転資金 |
1.AMDA本部からの助成金 |
25,873 |
融資の実施(2回目) |
18,380 |
回転資金 |
2.AMDA本部からの融資(1+2) |
22,800 |
融資の実施総額(1+2) |
94,940 |
未払い融資 |
総資本金(1+2) |
48,673 |
上表は融資支払総額が総資本金の約2倍になったことを示している。これはABCが1年間に回転小規模融資で成し遂げた実績である。
B. AMDA研修センター(ACT)
ACTは1998年3月始めから正式に活動を開始した。最初は1998年3月最後の週にAMDAフィリピンからの1人の会員のために
グラミンバンクモデルについてオリエンテーションプログラムが実施された。そして1年少々の間に既述の成績を上げた。
その間にACTは各プロジェクト実施地においてその地域のボランティアを募集し訓練するためのネットワークを広げる為に
5ヶ所の様々な場所に地域事務所を開設した。これらのボランティアは必要に応じAMDAのプログラムを積極的に支援するよう期待されている。
研修プログラムには下記の項目が含まれている:
a) 緊急時の対応: 個人間のコミュニケーションを通して一般に認識させるための大規模なプログラム
b) 如何なる緊急事態にも直面できるボランティア活動を開発
c) ABCプロジェクトのために小規模融資に関する仕組みについてボランティアを訓練
d) スタッフメンバーのため、総合的なプロジェクト管理に関する内部研修を実施
ACTはインターナショナルスタッフ(AMDAインターナショナルのアジア多国籍医師団)のために、
グラミン銀行モデルをもとにした意見交換や現場でのオリエンテーションプログラムを実施している。
現在迄にACTはアジア多国籍医師団からの6人の研修生に様々なスケジュールで研修を実施した。
1. 藤野康之、AMDAルワンダプロジェクト、プロジェクト調整員(期間: 1998年6月22〜25日)
2. 大森佳世、AMDAミャンマープロジェクト、ミャンマー代表 (期間: 1998年7月8〜19日)
3. Mr. Femald M. CHISANGA、AMDAザンビアプロジェクト、プロジェクト調整員(期間: 1998年12月23 日〜1999年1月27日)
4. 青葉かおる、AMDAザンビアプロジェクト、ザンビア代表 (期間: 1999年1月13〜19日)
5. Ms. Joyce Z. Daka、AMDAザンビアプロジェクト、プロジェクト調整員(期間: 1999年3月17〜25日)
6. Ms. Nang Seng AYE、AMDAミャンマープロジェクト、プロジェクトマネージャー(期間:2000年4月23〜28日)
ACTは世界のどこからでもバングラデシュで研修ツアーを受け入れる準備ができている。
主な方針は多様な文化的背景を持っている人々の交換プログラムの開発やバングラデシュにおける最近の社会経済的基盤の
開発課程においてNGOの紹介をする。この間、1998年8月の中旬にACTは2人の日本人のために研修ツアーを1週間実施した。
このプログラムは日本のエフサンツーリストの仲介を得て実施された。
ACTは今後もっと多くの研修ツアーを受け入れるために積極的に準備を整えるための努力をしている。
終わりに
バングラデシュのABCプロジェクトは首尾よくスタートした。今後はこのプロジェクトを長期にわたり自立できる状態に持続できるよう
努力することである。さもなければ私達の努力は無駄に終わるからである。バングラデシュは小規模融資に期待できる有利な土地柄である。
バングラデシュにこの様なプロジェクトを実施しようと企画してくださったAMDAインターナショナルに感謝し、
このプログラムの受益者が受ける多大な恩恵のために更なる支援をお願いしたい。
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