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AMDAネパール抗議デモ負傷者緊急医療支援活動
 
 ネパールでは4月6日以降、主要7政党の呼びかけによる全国ゼネストと民主化要求抗議デモが続き、デモ隊と治安当局との間で衝突が発生していました。20日、首都カトマンズを囲む環状道路では、政党活動家らが外出禁令を無視し、十万人近いデモ隊員が集結しました。この時点で報道によると、治安部隊の発砲など、全国で14人が死亡、100人以上が負傷しているとのことでした。この緊急事態に対し、ネパール政府は、AMDAネパール支部にデモの負傷者に対する医療支援を要請しました。
 ネパール支部は17日、外出許可証を得てカトマンズ市内で巡回診療を開始しました。積極的中立の立場で、25日まで、デモ参加者と治安当局双方の負傷者を診療しました。

 ネパール支部の巡回診療は、ネパール市民に十分に認知されており、巡回診療車を見て多くのデモ参加者が治療を求めて集まってきました。また、ネパール支部の活動は、連日新聞などのマスコミに取り上げられ、デモによる負傷者に治療内容や負傷者数を通して、デモの様子を市民に伝える貴重な情報源ともなりました。
■診療時間:8:00〜18:00(デモの状況によっては20:00まで)
■チーム:医師2〜3人、救急隊員2人、看護師1〜2人、運転手1人で構成したチームが2チーム
■医師  アーチャリアー・P・ラメシュ(AMDAネパール代表)ら9名
    救急隊員・看護師・運転手  レグミ・スデッシュら8名
    コントロール室員  カティワダ・ゴビンダら7名 
■調整員 谷口敬一郎(AMDA本部)     

患者数:1日10〜50人(デモの状況、激しさにより異なる)
患者は抗議デモの参加者、治安当局の双方を含み、巡回診療チームは合計194人に対して診療を行いました。

治療内容:応急処置としての傷口の消毒や傷の縫合、骨折や捻挫部位の固定(添え木)、ゴム弾による傷の手当て、また鎮痛剤や抗生物質などの医薬品の支給など

【診療数】
日付 治療部位・原因

病院へ申し送り
移送

頭部 脚部 碗部 轢症 銃創 その他
4月17日 7 8 15 7 0 12 49 4
18日 9 1 5 5 0 5 25 2
19日 0 3 3 0 0 2 8 0
20日 0 0 0 3 0 1 4 0
21日 11 5 7 5 0 9 37 1
22日 0 7 3 5 0 1 16 0
23日 0 1 1 7 1 2 12 3
24日 5 9 4 11 1 11 41 2
25日 0 2 0 0 0 0 2 1
32 36 38 43 2 43 194 13

 カトマンズ市内では、24日夜の国王演説を受けて25日の大規模抗議行動が中止になり、26日にはほぼ通常の状態に戻ったことから、AMDAは巡回診療を終了しました。 現地での活動の調整、情報収集に当たっていた谷口調整員は28日に現地を発ち、29日早朝に日本に帰国しました。
 今回の支援活動では、AMDAネパール支部が同国政府の要請を受けて迅速に初動を開始するなど、AMDAが掲げるローカルイニシアティブ(現場主導)を体現することができました。また抗議デモによる負傷者を対象にした緊急救援活動は初めてのケースであり、AMDAとして新たな経験・ノウハウを蓄積しました
 


 
 

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