行政機関とNGOは、HIV検査結果判明後のケア等に関しても前向きな方向性を協力して探ってきた。自らのHIV感染の有無を知ろうと決断した全てのVCTセンター利用者にとっては、最小限必要なことである。まずHIV陰性(未感染)の検査結果が出た利用者にとっては、その後の危険な性行動を回避すれば今の状態を保てるような気持ちの支えが必要となる。たとえば、ポスト・テスト・クラブ(PTC)というVCT利用者なら誰でも参加できるグループ活動では、検査結果に関係なく、HIV/エイズやHIV感染者、エイズ患者に対する理解をより深めることを中心に、行動変容の一助として、情報交換等を行っている。
HIV陽性(感染)という検査結果が判明した場合には、HIV陽性者のみが集うサポートグループを結成している。他人への感染を未然に防ぐべく行動することや前向きに生きること、そして抗エイズ治療薬(ARVs)の摂取順守や日和見感染治療についての心理社会的サポートを提供している。
AMDAケニア事務所ではこのような利用者ニーズにより良く応えるべく、ケニヤッタ国立病院や国境なき医師団ベルギー支部など医療施設との提携関係を持っている。またその一方、HIV/エイズという病気への啓発活動として地域住民を巻き込んだ活動をしている。 例えば、PTCやサポートグループのメンバー自身が民家を一軒一軒訪問し、経験に基づいて感染の有無を知ることや行動変容がいかに重要であるかを伝えている。
HIVの母子感染予防に関するケアは、妊娠している女性にとってはたいへん重要である。特にHIV陽性である母親にとって、自分のお腹にいる赤ちゃんをどのように守ることができるのかということは、大きな関心事である。
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HIV/エイズに関わる現実には、さらに驚くべき事が起こったりする。たとえば、あるカップルがHIV検査を受け、検査結果がそれぞれで異なっていたりするのだ。一方は、HIVに感染しているが、もう一方は感染していなかった。自分のパートナーが、他人と無防備な性交渉を行ったことによる悲劇である。 ケニヤッタ国立病院に所属するPIPS(Partners
in Prevention Study)という調査団体は、この問題の根底にある原因を調査している。AMDAはPIPSの協力団体の一つであり、AMDA-VCTセンターで検査を受けたカップルで、その検査結果が異なった場合は、調査協力へのふたりの了承を得られれば、連絡先の情報が送られるという仕組みになっている。調査は現在も続いており、原因はまだ究明されていない。
AMDAケニアのVCTセンターは経済的に貧しく、弱い立場に人々が多く住む、世界最大級のスラムであるキベラで活動を続けている。スラムの人々は、解決されない重要な社会的問題を多く抱えており、そのようなことからの逃避として、危険な性行動へ傾斜することがままある。怠惰、無気力、貧困、劣悪な居住環境と衛生状況、失業率の高さ、そして違法アルコール類の存在である。厳しいスラムの現実の中でVCTサービスを提供することは、カウンセラーとして大きな意欲をかき立てられるが、同時にスラムの住民である利用者たちが今後どう生きていくのかと問うことに対しての倫理的なジレンマと何度も直面している。そうしてセンター利用者は次々と死んでいき、孤児が増え、若い働き盛りの感染者が増え続けている。なぜ誰もこの状況を救ってくれないのかと、カウンセラーは落ち込み、嘆くのみである。
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