トップ >ジャーナル
 
インドネシア・ニアス島 緊急簡易家屋復興支援プロジェクト
海上輸送大作戦
AMDAニアス(ロジスティクス担当) 宇佐美直人

ロジスティクス担当の役割

 津波に続く去年3月の大地震で1万以上の家屋が倒壊したインドネシア・ニアス島で、
AMDAはシェルター建設を行っています。今事業の困難の一つは物資搬送(ロジスティクス)の難しさにあります。地震で橋は陥落し、もともと悪かった道路状態はさらに悪化し、トラックはおろか歩いてもなかなか到達できない遠隔地の集落が多くあります。我々の事業地6集落のうち3つが陸上輸送がほぼ不可能で、海上交通以外に選択肢が無い状況です。しかも村から近い海岸は非常な遠浅で、大きな船は近づけません。しかしシェルター1戸分で木材5トン、セメント1.3トン、コンクリート基礎工事用の砂利の類18トンを砂浜から運び込まなければなりません

海上輸送作戦

 港湾施設の無い浅い海岸、砂浜での陸揚げにはランディング・クラフト(LCT-上陸用舟艇)が必要といわれ、東ティモールでも活躍したと聞いています。その種の船は現在、スマトラ島のバンダ・アチェに集結中で、当地へWFP(国連世界食糧計画)、UNJLC(国連ジョイント・ロジスティクス・センター)、IOM(国際移住機構)、アトラス・ロジスティクス(ロジを専門とするNGO)などの担当者に会いに行きました。初期調査では我が事業村の遠浅の海岸に接岸するには容量100トン以下のLCTでなくては、ということでしたが、見つかったものは最小で300トンでした。

 
 

小規模LCT、バージ

 国際機関や何人かの華僑ビジネスマンにも当たってみましたが、適当なLCTが見つかっても係留地がジャカルタやシンガポールで、ニアスに来るのに1週間かかり、係留してある港から離れたその日から借り賃は1日当たり3,000ドルかかるといいます。これは無理です。しかし、あるロジの専門家からLCTが無くてもバージと言われるタグボートで牽引する平底船なら同じ役目が果たせると聞きました。するとスタッフがニアスの対岸にあるスマトラ島のシボルガという市に巨大な製材所があり、その種の船を大量に所有しているという情報を入手して来ました。シボルガなら船で10時間です。実際に行って製材所の船着場を歩いてみるとあるわあるわ・・大小さまざまなバージが。すると「あれ?」小さなLCTがあるではありませんか。会社の人に聞いてみると故障中で何年も使ってないという。容量は26トンで5トン・トラック1台が乗る、60センチの水深まで行けるから接岸できない海岸は無い・・素晴らしい!

 
 

WFP-SS (国連世界食料計画―船舶輸送サービス)

 会社幹部に会うと好意的でした。結局バージは保険、デッキ上のトラック固定の難しさがあるため、26トンLCTを修理、借り上げの方向で話がまとまりそうでした。この話をWFP-SS(WFP船舶輸送サービス)に相談すると、WFP-SSがそのLCTを借り上げて、我々に(無償)貸与できる可能性もある、という返事。他のNGOからの需要もあるからです。同時に現在WFP−SSが現在保有する300トンLCT(名前は「ハニー」)も同時に使えないか、事業地の海岸線水深調査をして欲しいということでした。

 
   3mの竹の棒(水深用)に目盛と石の重りをつけ、100mのひも(距離測定用)をくくりつけた手製の測定器とGPS(地球測位システム)を持ち、借り上げた漁船(AMDA丸5トン)に乗って事業村に近い海岸に出かけました。WFP-SSの300トンLCTは船尾が2.2mの水深地点まで航行可能で、船体が58mあるので、水深2.2mの地点が海岸線から58m以下なら接岸できるという理屈です。すると3つの事業村海岸のうち2つでは遠浅であるにもかかわらず、深い地点があって、300トンLCTが接岸できるポイントがあることがわかりました。沖合いの危険な浅瀬も環礁も無いようです。浅すぎる海岸線を持つ村でも干潮時に海岸づたいで別の事業村の海岸から4輪駆動車で物資が運べそうなことも判りました。
 
   300トンLCT「ハニー」、26トンLCT、AMDA丸、自家製簡易桟橋の組み合わせで、海岸に物資を揚陸するというプランが現実味を帯びてきました。うまく行けば3週間後からセメント用の砂利搬送が始まります。しかし海岸からどうやって数キロ内陸の村へ運ぶのか?ココナッツの木橋を架け、道を作り、一輪車かトラクターかロバで・・
ロジ担当者の眠れぬ夜は続きます。
 
 


 
 

Copyright (C) 2006 AMDA. All Rights Reserved.