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インドネシア スマトラ沖地震・津波復興支援プロジェクト
 AMDAインドネシア   金山 夏子
<< はじめに >>
 昨年の12月26日、あの津波から一年を迎えたその日、アチェは深い祈りに包まれていました。被害者であり被支援者であるアチェの人々、そして一年間をかけてアチェを支援し続けてきた国際社会が一体となった一日であったと深く感じています。

 紛争地であるという政治的な理由から、インドネシア政府より設置された3ヶ月の緊急フェーズ(12月26日〜3月26日)の間に実施した緊急医療支援活動。そしてそれ以降は、長期復興支援フェーズとして、インドネシア政府からの承認を条件とした復興支援活動にもAMDAは従事し、津波から一年目のその日をここアチェで、アチェの人々と共に迎えることができました。

 AMDAが長期復興支援事業を2005年5月17日より開始し、9ヶ月が過ぎようとしています。様々な支援機関が技術と経験を生かし、多様な支援活動を繰り広げていく中、AMDAはアチェのコミュニティーや人々が津波の体験を教訓としながら、"EmergencyResponse"また、緊急災害時に問題となる"Sanitation & Primary Health"に関するキャパシティーを高めていくことが重要である、との点に着目し以下のようなプログラムを立案し、これまで実施してまいりました。

<<プログラムの概要>>

アチェ州立ザイナル・アビディン病院支援活動
麻酔科派遣支援プログラム

ザイナル・アビディン病院内のICU
AMDA、アチェ県保健省、及びアチェ州立病院との協議の中で、アチェの医療機関が抱える問題として、麻酔科医師が一名しかおらず手術を行う上での専門医の不足が訴えられました。AMDAはAMDAインドネシア支部と協力し、南スラウェシ州のマカッサルから即戦力となる麻酔科医師を一年間派遣することを決定し、6月から支援を開始。日本人麻酔科医一名を含み、これまでAMDAの麻酔科医5名が州立病院の緊急手術に従事してきました。
看護士派遣研修プログラム
 病院院長及び看護士長との協議の中で、看護士の専門トレーニングが十分でないとの報告を受け、特に緊急医療の関連部署(ER、ICU、ICCU、手術室)に所属する看護師をマカッサルの南スラウェシ州立ワヒディン病院へ派遣することに決定。緊急医療に関する講習と、技術トレーニングを提供しワヒディン病院内での医療業務にも従事しています。第一次派遣看護士二名(ICU担当)は既に9月と10月の二ヶ月間でプログラムを終了し、第二次派遣(ER担当)は2月〜3月に派遣される予定です。
医療機関緊急対応研修(HOPE)
 アチェ州保健省を含む各医療機関との協議の中で、津波の経験に基づき、自然災害等の緊急時には組織マネージメント能力や関連機関間におけるコーディネーション能力が最も重要であること、そしてその能力向上がアチェでは必要との指摘が多く聞かれました。AMDAは深刻な問題として重視され始めた、緊急時における病院内、また医療機関間におけるコーディネーション・スキルの向上を目的としたトレーニング(HOPE: Hospital Preparedness for Emergency)を2005年8月に実施。緊急時には組織の方針決定者となる、各県保健省長と県立病院院長らを含む35名が参加の対象となりました。
救急医療資格取得研修(ATLS)
アチェの地元の医師らが常にAMDAへ訴えたこと、それは津波が起きた時、自分に何ができたのかが分からなかったという後悔の想いでした。いかなる緊急時にも備え、救急医療の技術を向上させるため、インドネシア外科医協会と協力し、国際緊急医療資格取得トレーニング (ATLS: Advanced Training of Life Support ) をアチェ州 出身医師35名を対象に2005年9月実施しました。

HOPE講義

ATLS 実技
アチェ州立シャークアラ大学医学部支援活動
救急医療研修
 シャークアラ大学では、救急処置に関する講義が開講され一年未満ということから、より充実した講義内容への発展と、講義で使用する救急処置器具の必要性(現在はザイナル・アビディン病院が貸し出し)がニーズとして挙げられました。学生自身も津波を経験したあと、救急処置の習得の重要性を実感し、自然災害等による緊急時に役立つ、よりプラクティカルな知識と技術を身につけたいとの要望に応えるため、AMDAインドネシア支部から各災害地に派遣されてきた実地経験豊かな指導陣を揃え、医学部生60名を対象にした救急処置のトレーニングを2005年7月に実施しました。
保健医療研修
 シャークアラ大学では、保健衛生を専門にした教授陣が不足しており、学生を教育する上で、講義の内容や陣容が十分ではないという点が問題視されていました。津波から半年が経過し、避難所での長期滞在生活が定着すると同時に生じてきた保健衛生問題に対処するため、また、保健衛生問題は緊急時における二次災害として位置付け、AMSAのメンバー60名を対象にした講習会を2005年8月に実施しました。
小・中・高等学校訪問教室
 ・救急医療教室
 7月にシャークアラ大学で実施された救急医療研修の受講生であるAMSAメンバー60名がトレーナーとなり、地元の中・高等学校を訪問し、自然災害に関する学習とそれに対応するための避難訓練、及び人工呼吸蘇生法等の応急処置のトレーニングを2005年8月から毎週実施しています。
 
 
 ・保健衛生教室
 8月にシャークアラ大学で実施された保健医療研修の受講生であるAMSAメンバー60名がトーレーナーとなり、地元の小学校を訪問し、「栄養・保健衛生・応急処置」に関する訪問教室を、関連キットの配布と併せ2005年10月から毎週行っています。
避難所でのソシアル・アクティビティー
 ・REACH-Aceh : Reading, Learning and Creativity for Healthy Life in Aceh
 津波から一年が経過してもまだ続く避難所での生活。そこで暮らす子供達のため、2005年6月から開始した巡回型教育活動がREACH-Acehです。プログラムは大きく三つ。移動図書館として避難所を訪問し、そこに集う子供達に栄養・保健衛生教育を実施。また、津波を経験した子供達の心をケアするための創作活動(絵画、作文、詩やドラマの創作、ゲーム)も行い、プログラム終了時にはそれらの作品を広く紹介するための展示会やフェスティバルも行っています。

REACH-Exhibition

REACH-Festival

≪プログラムがもたらしてきたベネフィット≫
 これらのプログラムを実施し、AMDAがもらすことができた最大のベネフィット、それは何よりもAMDAとアチェの人々の間に築くことのできた強い絆ではないでしょうか。現在、バンダ・アチェで活動する日本のNGOとしてはAMDAが唯一であり、且つ、約90名にのぼるスタッフは全員がインドネシア人、なかんずくその内の2名を除いて全員がアチェの地元の人々。
そのアチェの人々からなるAMDAのチームが何よりも、ローカル・パートナーシップを尊重し、AMDAが地域に根付き活動を続け得ることのできた結果の一つであると信じます。

 AMDAの研修を受けた看護士らが、アチェの病院内における今後の課題を指摘し、自ら積極的に改善に取り組もうとするイニシアティブをとっている姿。「大学での勉強だけではなく、将来コミュニティーに貢献できる医師となるため、地域の人々とプログラムを通じてこのように接することは貴重な体験だと思う」と積極的にAMDAの活動に参加される医学部の学生達。その医学部生らによる講義を熱心に聞き入り、興味深く応急処置の練習を繰り返す児童達。
また、自ら被災者でありながら、子供達への社会教育活動のため様々なアイデアを振り絞りながら避難所を巡回するスタッフ。「僕達に新しい知識を与えてくれたAMDAが大好きです。」と手紙を読んでくれる避難所の子供達。
「プログラムを終了せずにAMDAの活動を続けて欲しい」との言葉がかけられる時、地道でありながらも裨益者一人一人のために、日々支援活動を続けることが何よりも大切であるということを強く実感します。
≪直接裨益者数データー≫
長期復興フェーズ(2005年4月6日〜12月末)

医療機関緊急時対応研修への参加県:10県
救急医療資格取得研修への参加県:15県
派遣麻酔科医師による直接手術患者数:632名
派遣看護士による外来・入院患者対応数:3,326名
救急医療に関する学校訪問教室:1,438名
保健衛生に関する学校訪問教室:1,279名
避難所で生活する子供のための巡回医療教育教室:9,634名

 
直接裨益者数 合計:16,309名
≪これからの展開≫

5月から開始された長期復興支援活動の第1フェーズは、医療機関を対象に"Emergency Response & Primary Health"に関するプログラムを実施してきました。今後は第2フェーズとして、"Hospital Support, Community Support & Peace Building"を軸に展開してきます。

Peace Building(医療和平プロジェクト)
・REACH Aceh for PEACE(健康・平和教育)
・巡回診療
第2フェーズの新たなプログラムとして、ここアチェにおいてもAMDAがこれまで紛争被害地で展開してきた医療和平をいよいよ開始します(2005年8月15日、インドネシア政府と独立派GAMとの間で和平合意が締結)。実施地は30年間にも及ぶアチェの紛争により、大きな被害を受け続けてきた南アチェ県と東アチェ県(州都のバンダ・アチェからそれぞれ330km)。バンダ・アチェで津波被災者を対象に行ってきたREACH(移動図書館、保健・衛生教育)に平和教育活動を加え、紛争下で心にトラウマの傷を負った子どものための、健康と平和のための教育プログラムです。
AMDAのスタッフは既に12月から1月にかけての二週間、専門家による心のケアと平和教育活動に取り組むためのトレーニングを受講しました。
また、紛争により避難生活を強いられ、元のコミュニティーが崩壊してしまった地域に、社会活動としてのREACH、そして巡回診療を実施するための"AMDA Peace Community Center"を設置します。AMDAによる活動の他にも、住民の人々がお祈りや地域活動のために利用し、コミュニティーの再構築に貢献することを目的としたものです。現在、南アチェ県では1月から、東アチェ県では2月から活動を開始するため準備を進めています。
 


 
 

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