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ホンジュラス活動報告
 
AMDAホンジュラス 渡辺咲子

青少年育成・エイズ予防事業

 


エイズ予防キャンペーン サッカー大会

 ホンジュラスは、中米で最もHIV感染率の多い国で、同地域の感染者の60%を占めています。さらに若い世代の感染者が増えていることから、AMDAでは、青少年のHIV/エイズ予防の活動を行っています。
 若者の間にHIV/エイズが広がるということは、何を意味するのでしょうか?HIV感染からエイズの発症までには、大きな個人差があります。また、抗レトロウィルス剤は高価であり、国が無償で提供できる数も限られているため、先進国のHIV感染者のように、抗レトロウィルス剤を服用し、日常生活を何十年も送ることは、大変難しいのが現状です。エイズ患者の増加は、労働人口を減少させ、貧困をさらに深刻化させることになるのです。
 首都テグシガルパ市サンミゲール地区では、国際ボランティア貯金、AMDA鎌倉クラブのご支援を頂き、青少年育成・エイズ予防教育を行っています。この地域には、低所得者層が多く、中には、川や崖の淵に不法占拠で住居が建てられている場所もあります。青少年育成教育では、小中学校の生徒及び、非就学者を含めたコミュニティの若者を対象に、自己認識、自己実現、将来の展望、人生設計、青少年と性について考える機会を提供しています。

HIVの感染経路は、1.性交渉による感染、2.母子感染(HIV陽性の母親から妊娠期、出産時、授乳による感染)、3.血液感染、の3つがあります。中でも、最も多いのは、性交渉による感染ですが、性交渉を始めるまえの子供たちに、HIVが性交渉で感染することについて実感ができません。そのために重要になるのが、性交渉の時期を遅らせることです。生徒たちに、将来の夢、目標を聞くと、医者、弁護士、会計士、中には、父親のように、家具職人や自動車整備士、あるいはサッカー選手、歌手といった大きな夢を持っています。自分の子供には、バイリンガルの私立校へ通わせたい。私設クリニックで病気の治療をさせたいと、よりよい生活を夢見ています。このように、彼らの目標を聞き出し、その実現のために、何が必要か、何をしなくてはならないか、障害になるものは何かを明確にすることにより、思春期に持つ、異性、性交渉の興味を、実行に移す前に、さらにその先について考えられるようになることを目的としています。

この活動で、昨年から大きな変化が出てきました。コミュニティで青少年育成教育を開始し、その
参加者の中から、継続的にエイズ予防活動に参加したい、もっと知識を増やしたいという若者が、
集まり、"Jovenes Salvando Jovenes"(若者が若者を救う)という青少年グループが形成されました。彼らと毎月一度ミーティングを開き、ワークショップを行ったり、エイズ予防キャンペーンに積極的に参加したりしています。私たちは、コミュニティと協力しながら活動しているものの、やはり外からの働きかけになりますが、彼らが積極的にエイズ予防教育に参加することにより、コミュニティの中から、それも、同世代の若者たちからの働きかけが可能となりました。
これはピア教育と呼ばれるものですが、同じ地域の同じ世代の仲間から伝えられることによって、エイズ予防というものがとても身近に、そして自分のこととして感じられるようになります。今後、この青少年グループの活動を活発化させ、エイズ予防教育をさらに効果的なものにしていきたいと思います。


性感染治療薬の提供
(左:サンミゲールヘルスセンター所長、
右:筆者)



学校での予防教育


エイズ予防のパンフレットを配る
青少年グループ
トロヘス事業「妊娠適齢期女性及び伝統的助産婦研修計画」
 ニカラグアとの国境付近に位置する農村地域のトロヘスでは、これまで、ヘルスボランティアの育成、コミュニティ薬局の設置、栄養・生活改善を目的としたコミュニティ農林業支援を行ってきました。2005年4月から2006年8月まで、在ホンジュラス日本国大使館の草の根・人間の安全保障無償資金協力の支援を頂き、「妊娠適齢期女性及び伝統的助産婦研修計画」を実施いたしました。これは、エルパライソ県内でも妊産婦死亡率が高いトロへスで、伝統的助産婦の育成と、コミュニティの女性に対する、リプロダクティブヘルスに関するワークショップを行うものです。この事業は、コミュニティ薬局のある、20のミュニティを対象とし、合計19名の伝統的助産婦育成を行い、伝統的助産婦とヘルスボランティアが中心となり、コミュニティにおける妊娠の早期確認、ビタミン剤、葉酸服用のプロモーション、様々なテーマのセミナーを行いました。

 コミュニティのセミナーでは、リプロダクティブヘルス、家族計画、家庭内暴力、セクシュアリティーとジェンダー教育、衛生にかかわるテーマについて、3〜4回に亘り行いました。当初は、女性を対象としていましたが、ヘルスボランティアから、女性だけを対象にしても、男性にも同じように教育をしない限り効果はないという意見が出ました。一方で、男性とともにセミナーを受けることに躊躇する女性もいるため、両方の参加を促すべく、男女が別れて、それぞれセミナーを受けられるよう配慮しました。

 男性の中には、避妊について無関心な人、宗教の関係で避妊について否定的な考えを持つ人もいます。しかし、妊娠に関する負担やリスクについてセミナーを行い、また、避妊法についても、家族の健康、特に配偶者のよりよい健康のために、必要なひとつの方法として考えてもらう機会を提供することで、彼らの意識にも変化が見られました。そして、伝統的助産婦たちの働き、ヘルスボランティアによる教育の効果は、対象20コミュニティー1年間の妊産婦死亡率ゼロという形としても見られることができました。


リプロダクテイブヘルス教育


男性に対するセミナー


伝統的助産婦へ提供する
出産介助キットの説明をする筆者
 


 

 

 

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