ニカラグアとの国境付近に位置する農村地域のトロヘスでは、これまで、ヘルスボランティアの育成、コミュニティ薬局の設置、栄養・生活改善を目的としたコミュニティ農林業支援を行ってきました。2005年4月から2006年8月まで、在ホンジュラス日本国大使館の草の根・人間の安全保障無償資金協力の支援を頂き、「妊娠適齢期女性及び伝統的助産婦研修計画」を実施いたしました。これは、エルパライソ県内でも妊産婦死亡率が高いトロへスで、伝統的助産婦の育成と、コミュニティの女性に対する、リプロダクティブヘルスに関するワークショップを行うものです。この事業は、コミュニティ薬局のある、20のミュニティを対象とし、合計19名の伝統的助産婦育成を行い、伝統的助産婦とヘルスボランティアが中心となり、コミュニティにおける妊娠の早期確認、ビタミン剤、葉酸服用のプロモーション、様々なテーマのセミナーを行いました。
コミュニティのセミナーでは、リプロダクティブヘルス、家族計画、家庭内暴力、セクシュアリティーとジェンダー教育、衛生にかかわるテーマについて、3〜4回に亘り行いました。当初は、女性を対象としていましたが、ヘルスボランティアから、女性だけを対象にしても、男性にも同じように教育をしない限り効果はないという意見が出ました。一方で、男性とともにセミナーを受けることに躊躇する女性もいるため、両方の参加を促すべく、男女が別れて、それぞれセミナーを受けられるよう配慮しました。
男性の中には、避妊について無関心な人、宗教の関係で避妊について否定的な考えを持つ人もいます。しかし、妊娠に関する負担やリスクについてセミナーを行い、また、避妊法についても、家族の健康、特に配偶者のよりよい健康のために、必要なひとつの方法として考えてもらう機会を提供することで、彼らの意識にも変化が見られました。そして、伝統的助産婦たちの働き、ヘルスボランティアによる教育の効果は、対象20コミュニティー1年間の妊産婦死亡率ゼロという形としても見られることができました。