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青少年を脅かすHIV/エイズ
AMDAカンボジアの取組み
AMDAカンボジア支部長 シエン・リティ
(翻訳 藤井倭文子)

  アジア 太平洋諸国の中で、成人のHIV感染率が最も高いと言われているのが、ここカンボジアである。2003年末の統計によれば、カンボジアでは推定123,100人の成人(15−49歳)がPLWHA(HIV感染者、エイズ患者)であるとされている。 2003年だけでも、約8,000人の成人が新しくHIVに感染し、HIV感染者の17,900人が死亡したと推測されている。2003年の成人HIV感染率は1.9%で、ピーク時であった1997年の3.0%からは減少している。

 麻薬使用者やMSM(同性との性的接触を持つ男性)におけるHIV感染率は、現在判明していないが、カンボジアにおけるHIVの蔓延は、主に異性との性的接触が原因であると考えられている。夫から妻への感染が現在一番多い。成人HIV感染者の約47%は女性で、そのうち2.2%の女性は妊産婦検診時にHIV感染が見つかっている。新しくHIVに感染する者の3分の1は、母子感染である。

 その他の重大な要素として、男女不平等、巨大な性産業の他に、国内の人口移動が挙げられる。カンボジアでは、国境を越え隣国へ、州から州へ、農村部から都会への人口移動率が大変高い。  
首都プノンペン周辺に多い被服縫製工場の存在と、農村部から都会への人口移動についての関わりは深い。およそ140,000人の若者が首都プノンペン周辺にある約65の被服縫製工場で働いている。その多くが30歳以下の女性である。被服縫製工場で仕事を得るために、「生まれて初めて」農村部の家族もしくは親類のもとを離れ、都市部へと移り住む人がほとんどである。中には被服縫製工場で働く傍ら、性産業に従事する女性もいる。

 農村部と都会では、HIV/エイズに関する知識に大きなギャップ(格差)がある。HIV/エイズを取り巻く差別やスティグマは、家庭や農村部の地域社会レベルに根強く残っている。

 以前、HIV/エイズの蔓延といえば都市や、一部の地方都市に集中していた感があった。しかし現在は、先述したような農村部から都会への出稼ぎ労働者が、都会でHIVに感染し故郷に戻っていくことで、農村部や過疎地帯にまでHIV/エイズが蔓延しつつあるのだ。カンボジア政府、市民団体、国際社会、支援者、NGOやその他多くのグループが共に努力しているにもかかわらず、HIV/エイズの蔓延は、カンボジア中の青年層を脅かす最も大きな問題となっているのだ。

小中学生対象の予防啓発活動の様子
 昨年から今年にかけ、主にFAOカンボジア、ADRA、FIDR、株式会社フェリシモ「地球村の基金」からご支援頂き、学校保健を通じHIV/エイズ予防啓発とリロプロダクティブ・ヘルス/ライツに関する教育活動を行っている。今年は、公立(私立)学校や大学だけでなく、支援の届きにくいインフォーマルな教育施設にもアプローチできればと思っている。

 プロジェクトで利用しているIEC(情報、教育、コミュニケーション)教材は、青年層に対し、行動変容を促すためのメッセージを伝える重要なツールのひとつである。IEC教材の製作には、特に下記「ABCDEアプローチ」に焦点をあてている。

・A = Abstinence for youth, including the delay of sexual debut and abstinence until marriage:青年層での禁欲(初体験を遅らせる、結婚まで禁欲する)

・B = Be faithful for couple ( one wife and one husband):夫婦間で忠誠を誓う(一夫一妻)

・C = Condom use at anytime when they find the sex outside home:家庭外でセックスする時も常にコンドームを着用する

・D = Do not use Drug especially for drug injection:麻薬を使用しない(特に注射器を使用する麻薬)

・E = Education to all people especially for the youth:全ての人々(特に青年層)を教育する

 今世紀、カンボジアはHIV/エイズに関して新しいチャレンジに直面している。カンボジアだけではない。HIV/エイズは地球規模での取り組みが必要なグローバル・イシューなのである。予防啓発活動は、HIV/エイズを撲滅するための大切な手段の一つであるが、しかし同時に、社会経済的発展や、カンボジアのような発展途上国におけるグローバル化が何をもたらすのか、我々は考えなければならないだろう。


世界エイズデーキャンペーンの様子
HIV/エイズについてのメッセージを伝えながら歩くAMDAスタッフ
HIV/エイズについて学ぶ保健ボランティア
 


 
 

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