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ビタミンA欠乏症(vitamin A deficiency, avitaminose A)


疫学(epidemiology)
vitamin Aまたはretinol は脂溶性で、沢山の生理学的機能を維持するために必須の栄養素である。細胞の分化、上皮の結合(mucopolysaccharideの合成、即ち粘膜形成に関わる)、視力、免疫反応、成長に関係する。vitamin Aは呼吸器感染症を予防する役割を果たすが、これが欠乏状態の小児の頻度の高さは深刻である。しかし小児死亡率とvitamin A欠乏症との関係は、より議論が必要である。
1日の必要量は小児で 300μg、成人で 750μg である(1IUは retinol 0.3μg に相当する)。乳、バター、卵黄、肝、腎にvitamine Aは多く含まれる。一部の果物や野菜(人参、ほうれん草、パパイヤ、マンゴウ、赤椰子油)にはcarotineというこのビタミンの前駆体が含まれる(carotine6μg= retinol1μg)。小腸からのvitamin Aの吸収とcaroteneからvitamin Aへの変換には、胆汁と栄養不良下で消失し易い酵素で促進される。吸収されたvitamin Aはリンパ管系と肝ででエステル化され、そこに貯蔵される。放出はアルコールの形(retinol) でなされる。必要とされる組織に、血漿蛋白と結合して運ばれる。網膜ではアルデヒドの形(tetinene)で利用され、他の酸(retinoic acid)の形でも利用される。
ビタミンA欠乏症はアジアの貧困地域に共通して見られる。インド、ミャンマー、バングラデシュ、スリランカ、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピンに多い。近東(ヨルダン)、北米、ラテンアメリカではそれ程多くない。黒アフリカとアンチル諸島(ハイチ)には稀である。食品中のvitamin Aが不十分のため、それだけでは必要量を賄えない。成人では摂取量が不十分でも、肝疾患、吸収不良(スプルー)、必要量の増大(妊娠、授乳)がない限りは不顕性である。生後6ヵ月から6才までが、vitamin Aの欠乏が最も多く見られる時期である。出生時に肝への貯蔵が不十分であったり、母乳中のvitamin A含有量が乏しい場合、消化管障害や蛋白欠乏症時には、vitamin Aの吸収と利用が阻害される。

症候(symptomatology)
vitamin A欠乏症は幾つかの臓器の上皮に障害を与える。特に眼球には最も容易に影響する。眼病変は、外部では角膜上皮と結膜上皮(眼球乾燥症)に、内部では網膜(昼盲症)に生じることがある。
昼盲症または薄暮様の視力症は、網膜のかん状体のrhodopsineの変性の結果生じる。これは早期の症状で、ビタミン補充療法で速やかに回復する。
眼球乾燥症(xerophthalmia)は結膜と角膜の異常な乾燥を特長とする。眼球結膜はくすんで皺だらけとなり、時には(結膜乾燥症で)色素沈着する。(角膜乾燥症では)角膜が輝度を失い、縁辺が不鮮明となる。流涙が不足し、涙腺は肥大して、高度の羞明を訴える。Bitot斑が特徴的だが、非特異的である。この斑は青白い、泡状の、三角形をしたもので、角膜の外側の、眼球の水平方向内側に認められる。これはkeratineの変質物が沈着したものである。
角膜軟化症(keratomalacia)は視力を冒す。角膜混濁は血管増生、浮腫、或いは壊死によるもので、潰瘍形成の原因となり、ついには角膜穿孔から全眼球症への危険が生じる。
vitamin A欠乏症は、世界中で失明原因の第1位(年間に25万人の小児)を占める。その他のvitamin A欠乏症の所見は稀であり、議論も多い。呼吸器と消火器の上皮への病変は、vitamin A欠乏症の小児に気道や消化管性の疾患が頻発することから説明される。

診断(diagnosis)
精密検査として、肝に貯蔵されるvitamin Aの割合を、肝生検で調べる方法があるが、実用的でない。
vitamin A欠乏症の間接的な評価法で、最も利点が多いのは、血清中で血漿蛋白と結合しているRBP(Retinol Binding Protein) を測定することでretinolを評価するのと、眼球の検査をする方法である。血清または肝のretinol量と眼球検査の結果は、重症の栄養不良時を除いて、見事なまでの相関関係を示す。

治療と予防(treatment and prevention)
vitamin Aは(Arovit, Avibonなど)脂溶性にして経口で投与される。筋注は(コレラ様の病態や吸収不良で)消化管からの吸収が低下している症例で行なわれる。
治療の適応はvitamin A欠乏症状を呈する者全てにあるが、薬容量と投与の間隔は年令によって異なる。1才未満の乳児(体重8kg未満)では、経口で10万IUを第1日、2日、28日目に処方する。1才を越える小児には、経口で20万IUを第1日、2日、28日に与える。妊婦または産後の女性の場合、角膜病変の程度によってのみ薬用量を決定する。この理由は小児への投与法にそった従来からの処方で、20万IUを越えるvitamin Aを投与すると、先天性奇形の危険性が生じるためである。米国食品医薬品局(FAA)の報告によると、妊娠第1三分期にvitamin Aを連日15,000IU以上摂取すると、水頭症や口蓋裂など胎児奇形発生の危険度が、摂取量5,000IU未満の妊婦の3.5倍となり、食品の他に1万IU以上摂取すると、57出産に1例の割合で先天奇形が発生するという。逆に1万IUを超えない用量で14日間連日投与しても、催奇性の危険は全くないが、重篤な眼症状には無効である。
vitamin Aの予防的摂取には食餌量の増大以外にない。この目標を達成するための優先課題として、供給運動の(世界的或いは対象を絞った)組織化がある。このような運動は非常に効果的で、インド、ネパール、フィリピンでは人口の80%を対象にした運動で、眼球乾燥症を60-80%減少させることが出来た。このような運動は、生後6ヵ月から5才までの小児と授乳中の女性といった、危険性の高い集団を対象にしている。薬用量は年令により異なり、母乳を飲んでいない生後6ヵ月の小児で5万IUを経口で、体重が8kg未満の小児で3-6ヵ月毎に10万IUを経口で、体重が8kgを越える小児では3-6ヵ月毎に20万IUを経口で、出産前またはその後2ヵ月までの女性には20万IUを経口で、それぞれ投与する。

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