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クワシオルコルの疫学(kwashiorkor, epidemiology)


クワシオルコール、KWASHIORKOR, CIM 267  1933年にCecily Williams は西アフリカのVoltas川流域で、浮腫のある子供の病気を見付け、《kwashiorokor》と名付けて報告した。  この疾患は他の名前でも呼ばれている。黒アフリカでは《赤い子供》、ラテンアメリカでは患児の皮膚が蛇の皮を重い起こさせることから《culebrilla》、インドシナでは《Annam の浮腫》、中央アフリカでは《Obwosi》と云われている。国際的な合意によって、クワシオルコールという呼称が決定された。  Ashantis地方の方言で、クワシオルコールとは《次の赤ちゃんを妊娠したお母さんから離された子供に起こる病気》という意味である。一方この言葉の語源がKwasi=子供、Orkor=赤いから来ているようで、この症候群に見られる皮膚の症状にも由来している。 疫学  クワシオルコールは蛋白カロリー栄養失調症の重症型で、カロリーは足りているが、蛋白が不足している栄養状態である。この疾患は普通離乳の時期、即ち母乳栄養が児に充分な蛋白質を与えている時期と、大人と同じ食物で必要蛋白量を摂れるようになる時期との間にある、大切な過渡期に起こる。熱帯では離乳は12ヵ月から18ヵ月の間によく行なわれる。時にはそれより遅いこともあり、クワシオルコールは生後2−3才の頃に起こる。  この年齢では発育と筋発育のために蛋白所要量が増えて、1日当たり1-1.5g/kg 必要である。動物性蛋白(牛乳、にく、魚、卵)は必須アミノ酸が豊富であり、植物性蛋白より代謝され易いため、特に必要である。  ところが熱帯では、質の高い動物性蛋白は至る所で不足している。気候と家畜の病気(牛ペスト、トリパノソーマ)の為、放牧が難しい。アフリカのサハラでは、動物の群れとは肉や牛乳を得る資源と云うより、裕福な外の世界の象徴のように思われている。一方インドでは聖なる牛という、変わった扱われ方をしている。漁業は少し発達しているが不十分で、よく干されていない魚が売られている。たとえ動物性蛋白が手に入る時でも大変高価で、都市部でのみ小量買えるだけである。しばしば伝統上、家長であり労働する成人男子のために購入される。ある民族では(卵を食べると泥棒に化けると云って)、慣習として子供に魚や卵を与えることを禁じている。このようなことで殆どの地域では、子供の栄養源は植物であるが、大抵の場合蛋白量が少なく、一種或いは数種の必須アミノ酸を欠いていることが多い。  細菌、ウイルス、寄生虫の感染はクワシオルコールへの道を拓く。マラリア、腸管の蠕虫症、百日咳、結核、呼吸器と皮膚の感染、特に麻疹と胃腸炎が挙げられる。また離乳を突然行なうことは、子供の《心因性食欲不振》の原因ともなる心理的ショックを与える。 早発性の生後1年目頃に起こるクワシオルコールは特に重い。多くは乳汁が不十分な為に、早期に離乳してしまい、糖質の粥ばかりを与えてしまうことが原因である。トリニダードでは母乳は3ヵ月しか与えられず、6ヶ月目にはクワシオルコールが発症してしまう様な状況である。黒アフリカではマラスムと同様の疫学的原因が認められる。つまり母親の死亡や妊娠間隔が短いことである。一方都市部では、組成の悪い人工栄養を与えてしまう、誤った傾向が見られる。遅発性のクワシオルコールは幼児期や大人に見られるもので稀であるが、飢餓、災害、社会政治状況の悪化などの際に起こる。この場合しばしば、クワシオルコールとマラスムの中間の状態を呈す。

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