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合併症


 合併症は頻繁に起こり、しばしば厄介である。
 
 呼吸器合併症:熱帯地方で見られる麻疹の10−80%に発症する。単純例は麻疹ウイルスに因る間質性肺炎だが、大半は細菌の重感染が認められる。連鎖球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌、緑膿菌の他、時々黄色ブドウ球菌が起炎菌となる。化膿性の鼻炎、喉頭炎中耳炎と、時おり乳様突起炎を合併するが、これらは平凡である。晩期の重感染による喉頭蓋下中心の喉頭炎は、喘鳴を発する麻疹ウイルスに因る早期の喉頭炎の重篤さと異なり、予後は良好である。重感染に因る気管支炎は、肺感染症の原因となる。気管支肺炎は先進諸国では稀だが、熱帯地方では頻繁で、発熱、全身状態の悪化、重篤な呼吸不全(チアノーゼ、多呼吸、鼻翼呼吸)と心不全(肝腫大)を呈し、劇的な経過をとる。X線上、播種性または偽肺葉性の病巣を認める。気管支肺炎は様々な起炎菌で生じる。肺化膿症(肺膿瘍、膿胸、ブラ)や胸膜炎(化膿性胸膜炎、膿気胸)は殆どが黄色ブドウ球菌性で、これらも頻繁に起こる。
典型的な麻疹性肺障害では換気障害があり、局所性の無気肺や肺気腫が生じるが、これらは本質的に麻疹ウイルス自身で起こる。これらの障害は予後不良でないが、肺気腫のブラが破裂すると、気胸や重篤な縦隔性肺気腫といった重症の合併症を頻繁に起こして、重大な呼吸障害に陥る。頚部皮下に肺気腫を触知するか、X線上前縦隔にこれを認めれば、診断は容易につく。時おり縦隔性肺気腫に黄色ブドウ球菌性のブラを合併する。これも相当重篤である。病理組織学的または剖検で巨細胞性肺炎は、先進国では白血病や免疫抑制療法中の小児に見られるが、黒アフリカの栄養不良がある地域でも頻繁となる。これは免疫不全に因ると考えられる。
                        
 下痢と脱水:下痢は殆どいつも見られ、しばしば粘血便である。普通サルモネラ菌、赤痢菌、黄色ブドウ球菌が検出され、極稀に寄生虫(アメーバ)が原因となる。多くの場合、重症の脱水と虚脱、神経障害を起こす。これが麻疹による最大の死因となる。
 
 神経学的合併症:神経所見(痙攣、意識障害、運動麻痺、トーヌスの異常)は頻繁である。脳波所見では全領域でびまん性のδ徐波を認める。この障害の病体生理は不明である。真正の麻疹脳症(脳室周囲性白質脳症)は稀であり、常に脳障害を起こす他の原因に注意しなければならない。これには虚脱、急性呼吸不全、貧血、脳血栓、脳膿瘍、化膿性髄膜炎(耳鼻咽喉部からの二次感染)、悪性の麻疹に因る脳酸素欠乏症が挙げられ、治療により判断される。麻疹ウイルスは亜急性硬化性全脳炎(SSPE)の原因と考えられ、麻疹感染後年余を経て発病する。
 
 眼部合併症:頻繁に起こり、黒アフリカでは失明の原因の1/3を占める。結膜炎を起こし、次に細菌感染に因る角膜炎を併発して、角膜潰瘍が穿孔またはヘルペス性角膜炎となる。蛍光染料を数滴落とすと、細菌性潰瘍では円形、ヘルペス性潰瘍では多環状の病変を呈す。
 
 悪性型:本当の悪性型は欧州の症例ほど回復しない。窒息型、筋無力失調型、出血型が見られる。
 
 その他の病的合併症:予後不良のものがある。
 寄生虫疾患:アメーバ症は時おり亜急性の仙痛を引き起こす。悪性マラリアも多い。
 感染症百日咳は呼吸器合併症として好発する。ジフテリアも例外でなく、偽膜性アンギーナはもちろん、晩発性の喉頭炎でもこれを疑った検査を行なわなければならない。結核は麻疹により悪化し、しばしば急性の経過(粟粒結核)を呈す。アネルギー(免疫力の低下)は麻疹経過中や麻疹罹患後ふつうに見られる。ヘルペスの初感染は黒アフリカでは頻繁で(Dakar の麻疹入院患者の14%)、歯肉・口内炎、皮膚ヘルペス、角膜ヘルペス、時には致死性のヘルペス血症を招く。
 蛋白・カロリー欠乏症:これは麻疹と密接な関係があり、しばしばクワシオルコルを引き起こす。反対に栄養不良は麻疹を悪化させ易く、直接または間接的に麻疹に因る死をもたらす。
 


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