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症候
人間のペストは、腺ペスト、肺ペスト、ペスト性菌血症の3つに分けられる。

  腺ペストICD 020.0.:最も頻繁で一番軽症の型である。潜伏期は1-6日(世界保健機関)で、侵入期は短く(1-2日)、全身倦怠、びまん性関節痛、頭痛、悪寒と40℃に達する急激な発熱が認められる。時おりノミの刺し口が(足関節部、足背部に)見られる。初発性水泡には清澄な漿液中にYersin菌を豊富に含有する。
全身期には鼠径リンパ節腫(横根)の出現が特徴的である。この横根はペスト菌性のリンパ節炎であり、ノミに吸血された部位に従って発症する。一般に鼠径・下腿部に生じるが、時には腋窩部、頚部、下顎部にも見られる。縁辺は滑らかで堅く、円形で、急速に浸潤してリンパ節周囲炎を作り、深部に達して、皮膚に炎症を作る。形はいろいろだが、常に疼痛を伴う。横根には重篤な感染性の症候群を合併する。熱発は40℃に達し、脈拍との解離はない。顔面は紅潮し、苦悶状で、衰弱しており、全身状態の低下により、時おりせん妄や幻覚を認めることがある。消化管障害には嘔吐、下痢があり、舌苔や硫黄色の舌を呈し、重篤な脱水を示す。
治療を行なわない場合の経過でも、時おり好転する。8-10日後に横根は形を崩して、自然に白色または血性の漿液を排出する。同時に全身状態と神経学的所見は改善する。しかし局所の化膿は治まらず、はっきりしたはん痕を残して、時間をかけて回復する。
流行の状況によって死亡率はまちまちだが、ショックにより突然死する。経過中の合併症は沢山あり、刺し口に《炭そ様ペスト》が生じたり、横根に潰瘍や血栓を作る。その他の合併症には全身性、眼性、髄膜炎性および頻繁に肺性(二次性の重症な気管支肺炎は疫学上特に重要である)が認められる。 sulfamide系製剤と抗生剤の普及で、腺ペストは合併症を見ずに数日で軽快し、一般に横根が化膿することもない。もちろん早期から十分な治療が必要である。

  肺ペストICD 020.1.:肺ペストは、患者の飛沫、喀痰やノミの排泄物で汚染された塵埃といった、感染力のある物質を吸入することから生じる。これは Kurdistan地方、中国北部、シベリアのような寒冷な地域やマダガスカルでよく起こる。腺ペストに合併したペスト性気管支肺炎と肺ペストは区別されねばならない。真正の肺ペストからも流行することがよくある。
本型の潜伏期は数時間から数日程度で、極めて激烈に発病し、文字どおり患者を打ちのめすといった状態になる。
臨床所見は早期から問題が多く、全身状態の深刻な悪化、発熱、悪寒の他、広範な呼吸性の所見として、胸側部の圧迫感、過呼吸、チアノーゼ、発作性咳嗽が認められる。しばらくすると咳嗽中には、漿液や血液が混じった泡状の喀痰を排出し、その中にYersin菌を無数に含むようになる。理学検査上は肝脾腫がしばしばあり、脱水の所見を認めるが、不思議なことに胸部所見に乏しく、せいぜいラ音ぐらいである。胸部X線では、胸部全体に播種性の気管支肺炎像を呈す。
経過は昔なら数日以内に急性呼吸不全で必ず死亡したが、抗生剤とサルファ剤によって、今日では早期に治療を開始すれば、肺ペストは殆ど全てが軽快するようになった。
 
ペスト性菌血症ICD 020.9.:この型は混同してはならない。実際に肺ペストや腺ペストで、Yersin菌は血中から分離される。しかし《ペスト性菌血症》というのは、血液培養で陽性だが、局所所見のない特別なペストを指す。これは流行の極期に見られる恐るべき型で、激烈に発病して重篤な感染症候を示す。発熱は41℃に達し、肝脾腫、脳神経症状、出血症候(黒ペストの最初の臨床像)と赤痢様症候を時おり呈する。かつては数時間から数日で必ず死亡したが、ペスト性菌血症も緊急治療により救命可能となった。
 
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