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 疫学


 寄生虫:リーシュマニア症は二相性の原虫Leishmania属に因る。長く前方に伸びた鞭毛で上手に動く自由世代の前鞭毛型(promastigote, leptomonas型ともいう、図1・サシチョウバエの胃から採取したpromastigote)と、媒介昆虫や培養内、ヒトや哺乳類に寄生するときは組織球と単球に無鞭毛型(amastigote, leishmania型ともいう)が見られる(図2)。
図1 図2

 各々の組織球は一定の無鞭毛型を含有出来る。 May-Grunwald-Giemsa染色すると、楕円形で大きさが2−6μm、細胞質は明るく、赤紫に染まる核と中央には大きなカリヨソームが観察される。核の端には棹状の毛基体、或いは鞭毛根または根基体として鞭毛の痕跡がはっきりと鑑別できる(図3)。
図3

  世界保健機関(WHO)はヒトのリーシュマニアを17種に分類している。このうち13は独立種で、それらの類義的な亜種が4つある。幾つかの研究施設では、《生物学的命名法》という見事で価値のある方法で効果を上げている。アイソエンザイムの特性がよく用いられるが、DNA(デオキシリボ核酸)配列や特異抗体、分子工学なども利用されている。
 
 媒介昆虫:サシチョウバエ(phlebotomes、図4・果汁を吸う雄) は大きさ2-3mmの毛羽立った小さな体の昆虫で、熱帯では年中見られるか、地中海地域や亜熱帯では温暖な季節にしか現われない。幼虫(図5)は日向で育ち(特に洞穴や岩壁の洞窟)、さなぎ(図6)に変態する。成虫は日中(洞穴、シロアリの巣、家屋といった)日陰に住まい、夜間外に飛び出して、風が微弱で湿度が高くなると特に活発に飛び回わる。雌だけが吸血し、刺されると痛い。
図4 図5 図6

   Phlebotominae亜族は旧世界では Phlebotomus属(例えば地中海沿岸では P.papatasi, P.ariasi, P.perniciosus、インドではP.argentipes, P.salehi、チリでは P.chinensis、アフリカではP.duboscqi, P.martinii等々)、新世界では Lutzomyia 属(例えばブラジルではLu.wellcomei、仏領ギアナでは Lu.umbratilis、南米ではLu.carrerai, Lu.longipalpis)が主体である。
 
 感染動物:地域と種により異なる。L.donovaniはヒト間で伝播するが、L.infantum, L.chagasiのヒト症例の多くでは、イヌとの関係が濃厚のようである。一般にイヌでは本症は致死的である(図7・L.infantumに感染したイヌ)。旧世界のヒトの皮膚リーシュマニア症では、げっ歯類が感染動物として特定している(図8・アフガニスタン北部に生息するRhombomys opimus。これは南米のL.mexicana, L.amazonensisでも同様である(図9・南米のフクロネズミ)。皮膚リ-シュマニア症の幾つか(L.tropica, L.peruviana)ではイヌが唯一の感染動物として知られているが、L.brasiliensisによる皮膚粘膜型では動物の役割は全く漠然としており、多くの国では野性の感染動物は不明としか云われていない。アフリカのL.aethiopicaではイワダヌキが感染動物で、中南米のL.guyanensis, L.panamensisは貧歯目(ナマケモノ(図10)、アリクイ)である。
図7 図8 図9

図10

 
 生活史と感染様式(図11):脊椎動物、特にヒトの場合は、リーシュマニアは無鞭毛型になり、組織球や単球内で増殖して膨張させる。宿主細胞はついには破裂して、原虫を放出し、これが新たな細胞に侵入する。雌のサシチョウバエが感染者や病気の動物を吸血して、感染した血中の単球や皮下の組織球を吸収する。リーシュマニアは前鞭毛型に変態し、腸内で増殖する。凡そ1週間でサシチョウバエは病気を伝播可能となる。ヒトへの感染は(他の脊椎動物へと同様に)、感染したサシチョウバエが刺し口を通して原虫を吐出することで生じると確かめられている。例外的な症例として、性行為と輸血に因るヒト間の直接感染が報告されている。
 
図11

 宿主と寄生虫の関係:特にヒトの場合に具合が悪い。原虫はマクロファージに貪食され、試験官内ではそこで壊されるが、生体内ではマクロファージによるリーシュマニア抗原の認識不良やインターロイキン2とガンマインターフェロンの産生欠如のため、ある種のリーシュマニアは溶解を免れる。そこで免疫応答が欠如している者(幼児、高齢者、移植患者、AIDS患者など)でこれらは貪食球内で自由に増殖する。
  内蔵リーシュマニア症(カラ・アザール):リーシュマニア抗原に対する細胞性免疫がなく、逆に特異抗体は上昇している。非特異的なポリクローナル抗体も同様に分泌している。
  皮膚リーシュマニア:細胞性免疫は局所皮膚型では遅延または極めて緩徐に発現するが、びまん性皮膚型では全くない。抗体値は多様で、寄生種による。
  皮膚粘膜リーシュマニア症:細胞性免疫は上昇し、抗体も存在する。
 地理的関係:内蔵リーシュマニアはL.donovaniに因るもので、インドに大きな流行地域があった。マラリア対策に付随して減少しているが、それの中止と共にぶり返している。小さな流行地帯がケニア、スーダン、エチオピアに知られている。 L.infantum, L.chagasiに因る内蔵リーシュマニア症、或いは小児のKala-azar はイヌのリーシュマニア症からの散発例が南米、地中海周辺、中近東、中央アジアや中国に存在する(図12)。
図12

  皮膚リーシュマニア症の多湿農村型または旧世界型はL.major に因るもので、アフリカの乾燥地帯である赤道の北側、中近東、アジア中央部のインドに流行する。 L.tropicaに因る乾燥都市型は地中海東岸と中央アジア以外に明らかでない。びまん性皮膚リーシュマニア症はL.aethiopicaに因るもので、エチオピア、ケニア、タンザニアの山間部に局在し、ハイラックス(イワダヌキ)が保有動物である(図13)。
 新世界のアメリカ皮膚リーシュマニア症は多様な型があり、メキシコ南部とブラジルの森林地帯で流行する。 Utaはアンデスの太平洋側斜面に認められる皮膚型で、L.mexicanaが病原体で、テキサスで流行が見られたことがある。
  皮膚粘膜リーシュマニア症はアマゾンの森林地帯で広範に流行している。密林伐採の開拓者が感染して森林サイクルが始まる。
  L.guyanensis, L.panamensisに因る皮膚リーシュマニア症は広大な森林に入ったときにだけ感染するもので、ギニア、ブラジル、中央アメリカの見られる(図14)。
注)図12-14中でCUT.VISC.BOTH.はぞれぞれ皮膚型、内臓型、両型が見られることを示す。


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