マラリアの診断


 診断の第一歩は、まずマラリアを疑うこと。特にマラリア浸淫地域では、いかなる病態でも一度はマラリアを疑ってみて損はない。
旅行者の場合、浸淫地域から旅行歴は予後に関わる情報となる。「現地でハマダラカに吸血されたか?」を尋ねるよりも、予防内服の詳細(薬の種類、服用期間、コンプライアンス)を本人から聞き取っておくことが遥かに重要。

血中の原虫証明
 確定診断は血液塗沫標本からのマラリア原虫の証明。ギムザ染色が最も簡便でgold standardとされているが、常にpH=7.2に設定しておかないと、偽陰性例が急増することに注意。スライドグラスのリサイクルは、ベテランの臨床検査技師でも5回までにしておくほうが良い。寡少感染や抗マラリア薬が既に投与されている症例では、厚層血液塗沫標本と薄層血液塗沫標本の両方を作成し、前者でマラリア感染の有無を、後者でマラリア種を確認する。
アクリジンオレンジ(AO)による染色は、QBCスティックの遠心分離法か、特殊フィルターとハロゲンランプなど強力な光源を組み合わせた川本法とある。虫体が光って見えるので、特に寡少感染例で威力を発揮する。
 血液塗沫検査は原虫や細菌を検出しやすい熱発時に行ないたいが、それ以外にも定時的に施行する。原虫血症の程度と薬剤の効果判定、重複感染の否定(取り分け、熱帯熱マラリアが寡少感染している例)は臨床上極めて重要な情報となる。

血清診断
 間接蛍光抗体法(indirect fluorescent antibody technique;IFA)、酵素抗体法(enzyme-linked immuno-sorbent assay;ELISA)、DNAプローブを用いたハイブリダイゼーション法などがある。これらの手法は、特にマラリア抗原の検出感度が大変優れているが、過去の感染との鑑別が付かないため、病初期の臨床診断法としては一般的でない。

鑑別診断
 マラリア浸淫地では腸チフスエンテロウイルス感染症急性ウイルス性肝炎アルボウイルス感染症(特にデング熱)、非化膿性髄膜炎、流行性出血熱,Weil病などを疑う。熱帯熱マラリアでしばしば認められる重篤な病像を、熱性痙攣、破傷風化膿性髄膜炎と誤診しないこと。
重複感染もあり得るので、血液原虫検査を必ず複数回行なう。ギムザ染色と一緒にグラム染色も行ない、細菌検査も頻繁に行なうべき。

 アジア地域のマラリア診断研修などについては、バンコクのAsian Collaborative Network for Mariaが良い情報を発信している。


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