2007年11月28日
ホアビン省ダバック郡は、ベトナム北西部の山岳地帯に位置しており(首都ハノイから90キロ、車で2時間)2004年から2006年までの2年間、AMDAが外務省支援により地域開発事業を実施してきたタンザン・コミューンの所在する郡です。事業実施期間中からダバック郡とAMDAは重要なパートナーとして、タンザン・コミューンの人々の健康と衛生環境を向上するために協働してきました。
台風14号(通称レキマー、ベトナムでは台風5号)は、9月下旬に南シナ海で発生した大型台風で、10月3日ベトナム中部に上陸、同時に北部山岳地帯の数十年に一度といわれる規模の大雨をもたらしました。10月4日未明には降雨量はピークを迎え、山岳地帯の各地で家屋の倒壊、床下・床上浸水*1)、土砂災害*2)が多数発生、多くの死傷者*3)をもたらす惨事となりました。ホアビン省ダバック郡でも、同日の大雨により大量の土砂災害が発生し、交通・農業・家屋等の被害総額は230億ベトナムドン(約1億6千万円)にものぼります*4)。タンザン・コミューンでも一人が死亡、数人が重軽傷を負った他、家屋の倒壊、家財・家畜の流出など、住民らが大きな被害を受けました。
10月18日、ダバック郡のカウンターパートより、ダバック郡とタンザン・コミューンにもたらされた深刻な被害の報告と支援要請がAMDAベトナム事務所に届けられました。AMDA本部との協議の結果、義援金1,000米ドルをダバック郡を通じてタンザン・コミューンに寄付することが決定しました。
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*1)家屋倒壊9,469 世帯、浸水(床上、床下)129,982 世帯にのぼる(ベトナム政府調べ、10月10日時点)
*2)総土砂量2,085,123立方メートル(ベトナム政府調べ、10月10日時点)
*3)ベトナム全体で死者74人(うち洪水に起因する死者が71人を占める)、行方不明者18人、負傷者163人(ベトナム政府調べ、10月10日時点)
*4)同郡人民委員会災害対策本部調べ |
1.支援概要
- 義援金供与先:ダバック郡人民委員会
- 義援金額:1,000米ドル(約115,000円)
2.被災地視察状況
10月30日、ダバック郡人民委員会の案内のもと、ダバック郡の被害状況を視察しました。ホアビン省からダバック郡への山道でも多くの土砂崩れが発生しているのが見受けられましたが、郡の中心部から100m程度の幹線道路では、郡で最大規模の土砂崩れが発生し(写真・上、高さ10mの斜面がごっそり削れている)、一時は道路が完全に遮断され周辺地区から孤立してしまったということです。また別の箇所では運悪く土砂崩れのふもとにあった家屋が完全に土砂に埋まってしまいました(写真・中)が、幸い人的被害はありませんでした。
また、タンザン・コミューンでは鉄砲水で77歳の女性が流されて行方不明となり、当時同伴していた義理の娘はそのショックから錯乱状態になるなど、地域住民の心にも大きな傷跡を残すこととなりました。
3.義援金授与式
11月30日、ホアビン省人民委員会において、AMDAからの義援金を省人民委員会副委員長に授与しました(写真・下)。同副委員長からは、AMDAのタンザン・コミューンに対する過去の多大な功績に対する謝辞とともに、今回の義援金を同コミューンの復興支援に有効に活用するべく、省の監督のもとダバック郡が適切な管理を行うことが約束されました。
4.タンザン・コミューン洪水被害復興計画
ダバック郡人民委員会により、タンザン・コミューンにおける洪水被害の復興計画が取りまとめられ、11月中旬ホアビン省に提出されました。復興計画によると、AMDAからの義援金は、AMDAの支援により2006年に建設されたタンザン・コミューンヘルスステーションの船着き場の修復・再整備に使われる予定です。
かつての事業地でAMDAと共に汗を流した地域住民らが、一日も早く被害から立ち直り、幸せな暮らしを取り戻すことを願ってやみません。 |