1984年設立、国連経済社会理事会総合協議資格NGO 特定非営利活動法人AMDA

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ケララ州洪水被災者支援顛末記(1)

公開日:2019年02月26日
 
AMDAグループ代表 菅波 茂
 

ラジェッシュ氏の職業訓練校

2018年10月6日。関西空港からインデラ・ガンジ―(ニューデリー)国際空港に向けてAir Indiaで出発した。目的は次の5点である。1)ケララ州洪水被災者支援活動を一緒にしたインドの団体とのMOU締結。2)ビハール州政府Bihar Disaster Management AuthorityとのMOU締結。3)ブッダガヤ・ロータリークラブとのMOU締結。4)日本-インド友好医療センターの建築推進。

初めての経験であるが、Air Indiaの座席は空いているし、インデラ・ガンジー国際空港の税関もガラガラだった。理由はヒンズー文化が祭りの文化でもあることだった。多くの神々に対してそれぞれの祭りがある。今回はラクシミ神の祭りであるディワリ。ヒンズーの三大祭りの一つと言われている。この神はお金の神様である。ちなみに、ネパールもヒンズー文化である。王朝の交代も祭りに関係が深い。17世紀からマッラ王朝を排してネパール国家となったが、グルカ王朝以前はマッラ王朝を含む多数の王朝が存在していた。グルカ族は勇猛であるが、マッラ王朝の都を何回攻めても落とせなかった。最後の攻撃はマッラ王朝がヒンズーの神々に対する祭りを大切にする習慣を利用して、防御が手薄になった祭りの時に攻撃をすることだった。これは見事に成功して王朝交代となった。そういえば、トロイ伝説で有名なトロイもギリシャに対する偽りの戦勝で油断している時に、贈られた巨大な木馬から飛び出した兵士たちに門を開けられて敗れている。人間集団の求心力は不可欠であり、祭りはその大きな役割を果たしている。しかし、求心力の祭りを利用されて、国が滅んでは元も子もないとはこのことであろうか。

デリー国内線空港からIndiGOのフライトでパトナ空港に1時間半で到着後に、車で約4時間かけてブッダガヤに着いた。途中では、祭りを祝う赤、青、緑など色とりどりのイルミネーションが道行く家々に灯されていた。ブッダガヤでは花火が打ち上げられていた。ただし、子ども達が楽しんでいた爆竹の大きな音には参った。

ちなみに、パトナはBC3世紀に隆盛を誇ったアショカ王のマガダ王国の首都だった。ビハール州のビハールはビハーラに由来。ビハーラとは僧院という意味である。僧や尼僧が集まって修行のため集団生活をした僧院の付属施設として医療施設があったのではないかと考えたくなる。なお、ブッダガヤにはマガダ大学がある。生徒数は約20万人。そのキャンパスはとてつもなく広大である。

 

ラジェッシュ氏が運営する学校の児童

11月8日。エコレス・デラ・テラ・ソサイエティを主宰するラジェッシュ氏と彼の事務所で会った。トラストとソサイエティの違いを説明したい。トラストは一つの州内における活動が原則であるが、ソサイエティは複数の州にまたがって活動をすることができる。ラジェッシュ氏は貧しい子ども・大人のための教育(職業訓練を含む)を行っているが、対象がビハール州のブッダガヤだけでなく、ニューデリー、西ベンガル州、ラジェスタン州と4ケ所に拡大している。38歳の若さであるが、素晴らしい活躍である。ちなみに、彼の手相を観たが、第2生命線があった。聴けば、幼少時に鉄棒が額に突き刺ささり脳にも達していたが、一命をとりとめたとのこと。よく観ると、1センチぐらいの傷跡が額にあった。全体的にすばらしい手相だった。

 

井戸について村での話し合い

彼との相談は大阪の企業の社長夫人がインドの人の為に井戸を寄付したいとの申し出を具現化する為であった。彼の所有する土地がAMDA関連団体である日本-インド友好医療センターの敷地の隣にあった。日本・インド友好医療センターの土地に近接する貧しい地区(25世帯135人)にある飲料水用の井戸は浅くて乾季には地下水が枯れて、汲み上げられなかった。乾季になると、近くにあるラジェッシュ氏の灌漑用ポンプを使用して、飲料水のみならず洗濯までしていた。この地区に井戸を設置することに決定した。彼の提案は抜群であった。飲料水用の水は無料提供、農業用の水は有料にして維持費を捻出する。小さな故障は彼らが費用負担する。大きな故障はこちらが費用負担をする。この井戸の設置と運営はAMDAと日本-インド友好医療センター、彼の主宰するエコレス・デラ・テラ・ソサイエティ、そして私たちの良き現地パートナーであるベーダ―氏のトラストの3者で行うことに決定。ただし、地区の人たちには日本-インド友好医療センターのガードマンをしてもらう。事実、3ケ月前にも当センターの壁の一部が壊された事件があった。ラジェッシュ氏からは設置したポンプの使用状況について3ケ月ごとに報告をしてもらうことになった。

 

ブッダガヤロータリークラブとのミーティング

11月9日。ブッダガヤ・ロータリークラブに招かれた。2ケ月前に実施したケララ州洪水被災者救援活動の説明をした後に、インド国内の災害被災者に対するAMDAとの合同救援活動を提案した。全員一致でMOUを締結することになった。私の説明の趣旨はお釈迦様が悟りを開いた地である「ブッダガヤ」の名称の聖なる影響力だった。ブッダガヤにある各国の仏教寺院からなる宗教委員会にも、仏教徒が多い国々における災害被災者支援のアピールをブッダガヤ・ロータリークラブからお願いすることにした。勿論、シカゴに本部があるロータリー・インターナショナルにもブッダガヤ・ロータリークラブから同様のお願いをすることになった。近い将来に、国連経済社会理事会総合協議資格を有する同じ団体として、AMDAインターナショナルとロータリー・インターナショナルが災害支援協定を結ぶことができればと話をした。

 

ヘルメット配布

ブッダガヤ・ロータリ―クラブからも提案があった。前回の訪問時にブッダガヤ・ロータリークラブとAMDAと共同で、交通事故防止キャンペーンとして、街頭にてオートバイで通行中の住民にヘルメット45ケを配布した。このキャンペーンをテレビや新聞などのマスコミが取り上げてAMDAの知名度が一気に高まったとのこと。ブッダガヤ・ロータリークラブから費用対効果が高いから再三実施しようとの提案である。断る理由はない。特に、両団体が費用を折半したところが肝腎である。理由は後述するが、AMDAが負担した費用は2万円だった。

2018年2月ビハール州知事が奈良県を訪問するなど、交流が深まっている。在ニューデリー日本大使館も日本企業のビハール州への誘致を積極的に推進している。「インド人も来たくないと言われているビハール州」であるが、中国の次はインドの時代である。ビジネスにおいて、中国人は日本人の上を行くが、その中国人の上をインド人が行くと言われている。何故か。興味津々である。ブッダガヤ・ロータリークラブの個性豊かな方々から、インド流のビジネスに対する考え方とやり方がわかればと思っている。なお、インド人は上から下まで「バクシーシ」と言って堂々と物をもらう。これは「あなたが死後に極楽に行く善行をお手伝いする」という意味である。日本とは異なるヒンズー文化である。費用折半の真意と意義を理解していただきたい。

 
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