1984年設立、国連経済社会理事会総合協議資格NGO 特定非営利活動法人AMDA

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アフリカ・ルワンダへ小児医療専門家を派遣、学校健診を実施

公開日:2016年09月28日
 
2016年9月5日、ルワンダの首都キガリから「千の丘の国」と称されるやわらかな曲線の丘を車で8時間かけルワンダの西の端、コンゴとの国境にあるルシジ郡に岡山から医師が訪れました。小児外科の中原康雄医師(国立病院機構岡山医療センター、平成28年度岡山県国際貢献ローカル・トゥ・ローカル技術移転事業専門家)、小児科の頼藤貴志医師(岡山大学大学院環境生命科学研究科、アムダとして派遣)の2名です。今回の活動目的は新生児・乳幼児・小児の死亡減少を目的とした地方公立病院における小児医療のレベルアップ、ルワンダにおける集団学校健診の導入、普及への支援と母子手帳導入のためのルワンダ政府への働きかけです。

昨年、岡山県内各地で学校健診の知識とノウハウを実践的に学んだルワンダ保健省認可病院・ミビリジ病院長カリオペ・シンバ・アキンティジェ医師が今回の事業を全面的に主導し、現地での活動は進みました。

この活動に至る背景として、1994年4月ルワンダ国内で勃発した民族紛争によりルワンダの人口750万人中50万人が虐殺される事態となったことにさかのぼります。死体が山積みとなった画像が世界に広がり衝撃を与えました。アムダは岡山カトリック教会/カリタス岡山と合同事業としてルワンダ国内避難民キャンプでアムダ多国籍医師団による緊急救援活動を実施、翌年1月までにネパール、バングラデシュ、フィリピン、日本から計46人を派遣しました。この紛争で当時難民だったマリールイズさんはAMDA医療チームと出会い通訳として活動に参加、それ以来現在までアムダとの協力関係が続いています。

ルワンダ西部にあるミビリジ病院はカリオペ医師が院長をつとめる、周産期医療を中心に開設された地域の総合中核病院です。ベッド数203床、管轄地域約30万人に医療を提供しています。医師は8人で、取り扱う疾患は多岐にわたりますが全員一般医で、小児科の専門知識を得る機会が殆どありません。日本から訪れた医師らが目にしたのは35週と早産で産まれた新生児が母親のカンガルーケア(裸の母親の胸に赤ちゃんを抱っこする)を受ける姿でした。日本のカンガルーケアというと、母子の愛着形成の意味合いが強いですが医療資源の充分でないルワンダで、本当に保温を目的としている印象を受けたそうです。限られた医療人材と医療資源の中でどのように効果的に医療を実践していくか、新しい知識を得ていくかはルワンダを含めたアフリカの医療の課題のひとつとなっており、都市部と地方の医療レベルの差も顕著です。今回は小児科疾患に関する講義を中心にルワンダの地方病院でも実施可能な、超音波を利用した診断・治療が可能な病気の話などを現地医療従事者35名に対し実施しました。出席者からは日本の乳児死亡率がなぜ低いのか、先天性な心臓の病気はどう対応しているのかなど、積極的に質問が挙がりました。

9月7日、8日は首都キガリのウムチョムウィーザ学園幼稚園・小学校で、学校健診を実施しました。ウムチョムウィーザとは「良い文化」という意味で、マリールイズさんがルワンダ内戦後に「戦争で心身ともに傷ついた子どもたちに、教育を通じて夢を取り戻してもらいたい」との思いから開校した学校です。

昨年この学園はルワンダで初めてとなる学校健診を実施、今回が2度目となりました。日本から訪れた医師がまず、保護者、地元の協力者、医学生25名に対して日本の小児保健の現状を説明し、なぜ健診を行うのか、健診で診る項目について説明を行いました。出席者からは「親がしていけることは何でもしていきたい」、「この学校を皮切りに健診や母子手帳が広がっていくことを期待する」「過去にあった虐殺のために心理的な問題を保護者が抱えており、心理的な面のサポートも必要」などの声があがりました。その後、カリオペ医師、マリールイズさん、学校職員やルワンダ人医学生の協力を得て合計91名の健診を実施しました。フォローアップの必要な子どもが44名(48%)おり、最も多かったのが齲歯(虫歯:30%)、続いて臍ヘルニア(いわゆるでべそ)、特別な注意を必要とすると思われる病気として斜視疑い、腹部膨満(お腹の異常なふくれ)、不整脈、停留精巣、頭囲異常の指摘がありました。子どもたちは大変人懐っこく生き生きとしていますが、健診の際は慣れない診察に診察室に入った途端泣いてしまう子どもや、緊張の面持ちで聴診器をあててもらう子どもなど様々な子がいました。

その後、一行は保健大臣、教育大臣と面会しルワンダ国内でどのように健診を普及させていくか意見交換を行いました。日本の母子手帳の有用性、妊婦健診から乳幼児、学校健診、予防接種などの一連の健康管理を行うことの重要性と効果について話をすると、大臣はその意義について理解を示されました。健診で見つけた病気にその後どのように介入、対応していくかという課題も共通認識となりました。健診結果とデータはカリオペ医師と学園に引き継がれ、引き続き子どもたちのフォローアップを実施していきます。今後とも皆様のご理解とご支援を頂ければ幸いです。

派遣者による詳しい報告は以下の通りです。

中原康雄医師の報告書(中原医師報告書pdf
頼藤貴志医師の報告書(頼藤医師報告書pdf

これまでのアムダとルワンダでの活動については、以下の通りです。
1994年4月 ルワンダ難民緊急救援プロジェクト
1997年 帰還民シェルター建設事業、病院修繕事業
1998年 マイクロクレジット(小規模融資)事業
2015年 岡山県国際貢献ローカル・トゥ・ローカル技術移転事業研修員受入れ(カリオペ・シンバ・アキンティンジェ医師)
 
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