ミャンマー

HIV/エイズって?

AMDAミャンマー 木下 真絹子
AMDA Journal 2004年 3月号より掲載

ミャンマーとエイズ

ほんの2、3年前までエイズに罹ると、死と直面しなければならない・・が現実問題であった。それが、近 年抗エイズ薬(ARV)が使われ始めるようになり、薬を一生のみ続けなければならないものの、エイズ患者 であっても生きることの希望を持てるようになってきている。しかし、これは豊かな先進国に限って言える ことであり、ミャンマーのような国で一般の人に薬が行き渡るのはまだまだ先のように感じる。

エイズはミャンマーの保健分野でマラリア・結核の次にくる第3番目に重要な問題に現在位置づけられている 。WHO(世界保健機関)/UNAIDS(国連合同エイズ計画)によると2003年12月までにミャンマーでは約18万か ら 42万人がHIVに感染したと言われており、毎年2万人がエイズによって命を奪われている。2010年には年間 3万人がエイズで死亡するであろうと WHOは推定している。ちなみにミャンマーの人口は約4200万人であり 、日本の人口の約3分の1ほどである。

AMDA診療所に設置されたカウンセリングコーナー
AMDA診療所に設置されたカウンセリングコーナー

ミャンマーでは1980年中ごろに初のHIV感染者が見つかっている。80年代後半までには薬物注射使用者の感染 率が急速に上昇し、75%から85%とまで言われている(WHO2003)。言い換えれば、当時すでに100人の薬 物注射使用者中85人がHIVに感染していたことになる。しかし以前は静脈注射の感染ルートが主であったの に対し、近年ではミャンマーの主なHIV感染ルートは性感染が68%、静脈注射が30%になっている(ミャン マー政府2002年統計)。これは、性感染によってエイズが一般の人にまで広がってきていることを意味する のである。

パコダ祭りでのエイズ啓発活動
パコダ祭りでのエイズ啓発活動

タイとミャンマー

ここで、アジアでも早くからエイズ蔓延国になったタイとミャンマーを比較してみることにする。現在、タ イは国を挙げて様々なエイズ対策に取り組んでいるが、90年代半ばから後半にかけて多くのエイズ犠牲者を 出してきた。実際にミャンマーのエイズはタイのパターンに類似していると言われている。

タイに比べてミャンマーの薬物注射使用者の感染率が以前は80%以上とも言われたにもかかわらず、200 2年は25%以下と減少してきている。しかし実際はデータ収集の手法が変わったためであり、実際のところ 感染率はいまだに高いと言われている(WHO)。

ミャンマーでは様々な行為が違法につながるわけであるが、その1つに売春がある。しかし、人が動くとこ ろに売春あり…というのは多くの国で当たり前だ。売春をする女性は違法行為を承知で、生活のためにリス クを背負うのである。その上、今ではエイズになるリスクまで負わなければならない。このような多くの売 春をする女性たちは村に残してきた家族に仕送りをするために働くのである。悲しいかな、彼女達が貧困に あえぐ家族を支えるのだ。このようなミャンマーの状況を反映してか、タイと比べるとミャンマーの売春婦 の感染率は近年かなり高くなっている。実際にミャンマーにおける売春婦の感染率は1992年の4%から 2002 年には32%にまでなった。

リスクグループなどを介して、やがてHIV感染率は一般大衆にまで広がるのがパターンであ る。まさに、国全体が現在エイズ問題で揺れているアフリカを見ればわかる。エイズの怖いところは、家族 の一人がHIVに感染すればそれが他の家族メンバーにまでエイズ問題が直接影響することである。

仏教国ミャンマーにおける
エイズ差別と偏見

さて、ミャンマーは皆さんご承知のとおり仏教国である。アジアの中でも、まだまだ近代的な考え方が浸透 しきっていない国だ。女性はスカート、男性はロンジー(1枚の布で巻いた男性用スカート?)をはくのが 普通である。実際に女性の私が地方でズボンをはいていると、注目の的になる。

こんな保守的な文化だからこそ、性行為を介して感染するエイズの病気に罹った人に対しては差別意識が根 強くあるのだ。このような差別意識を人々が持っている限り、エイズ対策の予防活動にしてもエイズ患者の ケア・サポートするにしても障害となる。このようなミャンマー事情を考慮に入れた上でプロジェクトを慎 重に展開する必要がある。

AMDAミャンマーの
エイズ対策プロジェクト

10月から本格的に始まったAMDAミャンマーのエイズ対策プロジェクトでは、まずミャンマー人のHIV/AIDS: エイズに対する意識改革と予防を中心に活動が展開された。現場のスタッフが、様々な場所で、色々な グループを対象に保健教育やキャンペーンを企画・実行している。実際にAMDAミャンマーでも様々なグッ ズ(Tシャツ、カバン、キーホルダー、パンフレット、ペンなど)を作りそこには必ずAMDA マークと共に 赤いリボンをつけた。赤いリボンはエイズ撲滅のシンボルである。現在、スタッフはVCCT(自発的HIVカウ ンセリングとテスト)のトレーニングを受けている。2004年度からはVCCTサービスを各事務所で展開する予 定だからだ。AMDAはミャンマーにあるNGO団体の中でVCCTサービスを提供できる初めてのNGOとして許可が 下りた。ゆえに、いろんな意味で政府からも周囲のNGOからもこれからのAMDAの予防を超えたエイズ対策活動 は注目されているのである。

Live and Let Live

 これは昨年12月に行われたワールドエイズキャンペーンのスローガンだ。

Live: エイズウイルスと共に生きる人(HIV/AIDS患者)とその家族のエンパワーメントとHIV感染にもかか わらず前向きに生き、より良い将来を願うことを意味している。

Let Live: エイズウイルスと共に生きる人にケアとサポートを保証することを明らかにし、これらの人達 に対する偏見や差別をなくし、思いやりを示す考えを広めていくことを意味している。

最後になったが、AMDAミャンマーもこのスローガンを前に、一般住民対象の啓発活動のみならず、エイズと 共に生きる人と家族がより良く生活していくために様々なサポートをしていきたいと思っている。




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