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臨床症状


  臨床症状の多様性はそこに生活する者のリンパ管フィラリアへの疫学的条件に対応する。寄生虫と宿主間の免疫学的な競合関係が恐らく斯様な多様性の元となっている。
 
 健常人
  浸淫地帯のたくさんの人たちは複数の感染を受けながらも、臨床症状や寄生虫学的な所見を欠く。このような患者のなかには、免疫学的検査が著明に上昇している陽性で、明らかに影響があることを示している。この時点で生来の抵抗性が働いているのか、不顕性感染なのか知ることは難しい。
 
 不顕性ミクロフィラリア血症
  血中にミクロフィラリアを認める者では、臨床症状が全くないのが普通である。合わせて、特異抗原を用いた免疫検査での反応が欠如しているのが一般的である。健康保有者が浸淫地帯には多数いることが、本症が無くならない元凶となっている。
 
 臨床症状
 急性症状:強浸淫地帯に入った当初から3ヵ月後に認められる。
 急性外陰部障害:陰嚢のリンパ管が単独または併発で精索炎を起こす。突然生じる睾丸炎が乳び性陰嚢水腫の後にしばしば見られる。重症時の所見は発熱、衰弱、ときに妄想で、これらは急速に消失するが度々繰り返す。
  四肢の急性リンパ管炎:感染後3−20ヵ月して始まる。多くは熱発と全身症状が先行する。単純性リンパ管炎は四肢の炎症性浮腫と疼痛が主体である。皮膚は熱く、テカテカしている。リンパ節炎が周辺部にある。典型例では四肢の虫体から遠心性の進展が特徴的で、細菌性のリンパ管炎とは逆である。一時的に何日間か内攻し、再発するのも特長である。静脈炎の兆候はない。これらは病気が進行する間中見られ、連鎖球菌感染も加わって、四肢の象皮病に至る。
  急性深部リンパ管炎:末梢のリンパ管炎と同様に、体幹深部にも発症することがある。胸部または腹部の発熱疼痛症候群がフィラリア患者に見られ、ときに急性深部リンパ管炎になる。
  急性リンパ節症:リンパ管炎とは別にまたは合併して生じ、鼠径や腋窩部に多い。
  初期症状ははっきりせず、進行性の経過を取る。大腿部、精索、精巣に夜間つっぱり感や圧迫感を覚え、局部的に一過性の浮腫と時折四肢と男性生殖器に知覚過敏と軽度の紅斑を生じる。症状は短くなったり時間をあけて増大したり、合わさったりする。
 
 慢性症状:急性症状の積み重ねで、いろいろな所見を呈するようになる。
  陰嚢水腫:膣からレモン色の炎症性浸出液がいっ出し、血性や乳び性となることもある。慢性経過のためで、穿刺しても再び産出される。
  慢性睾丸・副睾丸炎:輸精管への波及は副睾丸炎の場合より希である。両側性に発生すれば不妊の可能性が生じる。
 リンパ節症:鼠径部、肘関節滑車、腋かに頻繁だが特異的ではない。診断への方向付けに価値がある。
 リンパ節リンパ管水腫:無痛性非炎症性の柔らかい腫瘍で、希な所見である。鼠径や腋窩部の正常皮膚では部分的に整復可能である。
 リンパ管瘤:体表部の瘤は四肢の近位部に選択的に見られ、破れてリンパ液が漏出し、重感染を生じることがある(図1.鼠径部リンパ管の石灰化)。体内瘤が破裂すると、乳び性腹水と胸水、浸出性腸症と時折乳び尿の原因となる。
図1

 乳び尿:腹部リンパ管や Pecquet槽(乳び嚢)の閉塞に因り、腎周囲リンパ管内の液の欝滞と圧上昇が引き起こされる。リンパ−尿瘻は腎うまたは腎実質に特に生じやすいと考えられている。乳びの診断はときには明白である(図2.右:エーテルを添加した脂肪性乳麋 左:糸状虫省による乳麋)。乳白色の尿が出たり、リンパ球、アルブミン、フィブリン、脂質(24時間に1g以上ではカイロミクロン状を呈す)を含んだ米のとぎ汁様だったりする。寄生部位を特定するのは困難である。両側脚部からのリンパ管造影では腎周囲リンパ管網の病的な拡張とたまにリンパ−尿瘻が明らかとなる。
図2

 予後はまちまちで再発がある。血尿や重感染も頻発する。
 象皮症:皮膚と皮下の繊維硬化が急性リンパ管炎の急性増悪を繰り返す部位で進行して、象皮症が形成されることがある。バンクロフト糸状虫 症では下肢、陰嚢(図3)、上腕(一側性または両側性)、陰茎、外陰部、乳房の順に見られ易い。マレー糸状虫 症では典型的には一方または両方の足の下方から膝へ(図4)、または片側か両側の前腕から肘にかけて見られる。生殖器には生じない。長期間顕著な機能障害を引き起こすことなしに、この象皮病は醜怪な機能障害に至ることがある。糸状虫 症の最大の障害は外見性であり、患者に早期から負担を掛け、その印象が長い間病として付きまとう。
図3 図4

 
 潜在性糸状虫 症:ミクロフィラリアが血中に認められないため、長期間糸状虫 が原因であることがはっきりしなかった、いろいろな所見の寄せ集めに対する用語である。《熱帯性肺好酸球症》(Frindmot-Moller, Barton) 、《糸状虫 性熱帯好酸球症》(Weingarten)、《ミクロフィラリアなき糸状虫 性好酸球症》(Meyers, Kouwenaar) が潜在性糸状虫 症の範疇にある。
  臨床上は糸状虫 性肺好酸球症(PEF)には慢性咳嗽、喘息様呼吸困難、変動性または持続性の肺陰影(粟粒性または結節浸潤性、両側性、下葉部中心性)があることで区別される。また熱帯性好酸球症にはリンパ節と脾に病変が不可欠である。検査上は血中好酸球が一定して上昇し、持続する。ミクロフィラリアは末梢血中におらず、リンパ節、脾または肺(成虫が見つかることもある)に存在する。PEFでは自然経過に切りはなく、間質性肺繊維症に至るが、diethylcarbamazineという特効薬を使えば、容易に回復が得られる。免疫学的には全ての糸状虫 抗原に過大反応を示すが、特にミクロフィラリア由来のそれに対して強い。
  潜在性糸状虫症は熱帯の全ての地域で見られるが、肺好酸球症はインド、シンガポールのW.bancrofti が生息する地域に、リンパ節症を伴う熱帯性好酸球症はB.malayiの領域に大半が見られる。


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