1984年設立、国連経済社会理事会総合協議資格NGO 特定非営利活動法人AMDA

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ネパール地震復興支援  〜車いす製造研修支援活動報告3〜

公開日:2016年02月18日
 
ネパール中部地震障がい者支援活動報告
理学療法士 西嶋 望(ネパール在住)

昨年4月25日のネパール中部地震から10か月が経とうとしている現在、復興はゆっくりと進んでおります。
しかし首都カトマンズでもまだ広い空き地ではテント生活の方も一部ですがいらっしゃいます。
私たちが活動している障がい者支援においては、医療機関を退院し親類宅やカトマンズ市内で比較的バリアフリーに近い環境の借家で療養生活をスタートさせた方もいらっしゃいますが、まだ障がい当事者とご家族には支援を必要としている方がいらっしゃいます。
このような状況から私は引き続き理学療法士として支援に関わらせていただいております。
そこでAMDAによる障がい者支援活動について現地の障がい者の状況などを交えながらお伝えしたいと思います。

  この度の災害の被災者には、今も避難生活を続けておられる方、障がい者となり人生が180度変わってしまった方など、まだ災害は終わってはいないと認識しております。
  それは世界で最貧国の一つであるネパールの社会的背景が大きく影響していると考えています。
ネパールでは震災以前から障がい者に対する制度も十分でなく、首都などの街以外では、医療機関の無いあるいは少ない状況でした。
そのため山間地域や貧困層の方々を中心として障がい者は、今の日本では想像もつかない状況におかれていました。長年寝たきりの方。
感覚を失った足先の褥瘡部分をゴキブリやネズミかじられている方。長く寝たきりであったために手足の関節が曲がったままの方など。
そして通常そうした方々は家に閉じこもっている方が多く、あまり医療職の私たちが見つける事は容易ではありません。
  私たちはこうしたネパールの障がい者の状況から、震災後再び同じような状況に置かれる障がい者がでるのではないか、と考えています。
2月初め、現地の障がい者団体:CILカトマンズ(Center of Independent Living Kathmandu)所属のピアカウンセラー(同じ障害者の立場でカウンセリングをする方)が脊髄損傷となり18年間もご自宅のベッドで寝たきりの方(写真1)の情報を得ました。
現在カウンセリングを数回にわたり実施して気持ちが前向きになるようになってきたとの報告がありました。
障がい者支援活動では、こうした方々を減らし、また生み出したくないという思いで活動を続けています。
  そこでAMDA障がい者支援では、「障がい当事者の立場になって考え、行動する。」をモットーにCILカトマンズの事務所に活動拠点を置いて共に活動をさせていただいております。

具体的な活動を紹介します。
昨年7月末に車いす製造のための研修会と実際に製造するプロジェクトにAMDAから資材協力を行いました。
その後更に4台の車いす製造の資材提供を行い1月末に完成(写真2)しました。現在はAMDA支援による車いすの障がい当事者へのフィッティングおよび引き渡しの活動と、合わせて生活福祉用具支援(写真3)も行っております。












  また車いすと生活福祉用具支援が可能となった事を受け訪問リハビリテーション(以下訪問リハビリ)を行うことが可能となりました。
生活福祉用具支援といいますのは、ポータブルトイレや松葉づえなどの福祉用具だけでなく、現地の障がい者の生活が自立につながるために必要な生活用品も含んでおります。
これらのリストアップには現地の障がい当事者の方々の意見を反映しました。
例えば、充電式懐中電灯や充電式ヘッドライトなどです。
電力事情が脆弱なネパールでは、現在一日13時間も停電があります。
障がい者の方々が暗闇の中トイレ等の移動ができるようにと考えての支援です。あるいは暖房もない環境下で健康を損ないやすいのも障がい者です。そのため衣類も支援リストに加えております。
このように今は生活福祉用具と製造した車いすを携えて訪問リハビリを行っています。訪問リハビリでは、車いすや生活福祉用具を効果的にお使いいただき、自立生活に繋がるように取り組んでおります。写真(4・5)は、震災で脊髄損傷となられた女性。















2か月前に訪問リハビリにて製造した車いすとポータブトイレの提供をしました。既に医療機関で受け取っていた車いすは大きすぎて室内環境に合わず片づけられていたことから自宅でも使えるよう環境に適した車いすとして今回AMDAの支援で製造した車いすの提供をしました。最近は台所で洗い物などをご自分でなさっておりました(写真4)。
  当初ベッドから離れる気力もなかったのですが、一つずつ自信がついてきているようです。また排泄をベッドにて義理のお姉さんにお世話してもらっていた事から、安定性がよく来客があっても恥ずかしくないようイスとしても使えるポータブルトイレ(写真5)を提供し自力でトイレができるようになりました。
  この訪問リハビリにより室内での移動が楽にできるようになったことで、笑顔も増えてきて、時々ベランダから外にもでるようになりました。このように訪問リハビリでは、ベッドに寝たきりの方には、ベッドから起きる方法をアドバイスさせていただき、そのための環境を整え、起きて座ることを生活の中に取り入れる事。
ベッドで起きることができる人には、ベッドから離れるための方法のアドバイスや、環境を整え、生活に取り入れる事。
ベッドから離れることができる人には、部屋から出るための方法のアドバイスや、環境を整え、生活に取り入れる事。
部屋から出られる人には、外に出るための方法のアドバイスや、環境を整え、生活に取り入れる事。
つまり寝たきりを防ぎ、閉じこもりを防ぐ取り組みを行っております。
  訪問リハビリは決して効率的な取り組みではありませんし、家に閉じこもっている方を見つけ出すのは容易ではございません。しかし、今回の震災で障がい者となられた方が、退院し始めた現在、このようなお一人お一人を丁寧に関わっていく活動が必要なのだと考えております。
ご支援いただいた物をあげることが目的ではなく、受け取った方々が、自立した生活を送れるようになっていただくことが目的です。
  そのためには、決して簡単ではありませんが、ご本人が「前向きに生きよう」という気持ちになっていただく必要があるのでCILカトマンズを主体に障がい当事者と共に活動を行っております。
ピアカウンセラーや障がい当事者の方々の協力や助言は大変活動に重要です。現地の方々を主体に取り組むという事は、様々な現地の情報もいただく事が可能となり、我々の支援活動を終えた後も現地の方々により継続された取り組みにしていくことも可能となります。

ネパールは新憲法が公布される前後から、インドとの国境付近での経済封鎖がありました。半年ほどたち最近ようやく国境が開かれ始めましたが、その間ガソリンやガスも不足していまいした(写真6)。この事態に対してネパールの人々は大変なご苦労もありながらも、「困ったときはお互い様」というAMDAとも共通する「相互扶助の精神」でのりこえてきました。現地のネパールの方々は、時間はかかりますがきっと再び立ち上がります。そして現地の障がい当事者の方々も「よりよい復興」という言葉のように、震災以前よりもネパールの障がい者の状況を良くしようと皆さん一生懸命に取り組んでいらっしゃいます。まだまだ時間がかかりそうなネパールの復興。どうぞこれからもネパールの事に関心をもっていただければと思います。




 
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