1984年設立、国連経済社会理事会総合協議資格NGO 特定非営利活動法人AMDA

絞り込み


※2006年以降の記事を検索

GPSP10事業(4分野)

国別

分野別

プロジェクト

 活動履歴

マリノ村有機農業技術移転プログラム 2015年技術指導中間報告

公開日:2015年07月07日
 
AMDAでは2011年からアジアへの有機農業技術移転を目的としたAMDAフードプログラムに取り組んでいる。
2013年にインドネシアスラウェシ島マリノ村から有機農業の研修生2名をAMDA野土路農場(岡山県真庭郡新庄村)に招へいした。
研修を終えた2名を中心に、2013年冬にAMDA有機農業の実践圃場をマリノ村に開所。
その後フォローアップ研修として日本から技術者が3回、現地を訪問した。
いずれも1週間から10日という短い期間の指導であり、限られた時間の中での指導が困難であることから、2015年5月から4か月の予定で、農業技術者であるAMDAスタッフ1名を現地に派遣し、現在技術指導にあたっている。

 

マリノ村の現状と2015年度技術指導の目的

インドネシアのスラウェシ島の農村部では貧困層が集中しており、農業者の教育水準も小学校中退程度と低い。
現地の農法では面積あたりの収量が少なく、ほとんどを自家用で消費してしまい収入につながらないため貧困からの脱却が困難であるという現状がある。
こで、2013年AMDAはマリノ村から2人の研修生を招へいし、新庄村のAMDA野土路農場にて6か月間の有機農業研修(稲作)を行った。
帰国後、その研修生と地元の農家がマリノ村で有機農業普及活動を行っている。

今年はじめ、マリノ村で収穫された有機栽培米と普通栽培米の分析検査を行ったところ、有機栽培米がより品質が良いという結果が得られた。
今後の目標は、この有機栽培米の収穫量を上げ、高品質の高級米として販売し貧困脱却の一助とすることである。
今回の派遣の目的は、青年海外協力隊の栽培指導員として2年間スラウェシ島に駐在していた経験を持つAMDAスタッフを派遣し、収穫量を上げるための技術指導と販路開拓を研修生や近隣農民に行い、マリノ村全体の生活水準を向上させることにある。

米の収穫期を含む2015年5月から8月までの4か月間で、4つの調査の方法をマリノ村研修生や農家の人びとに指導する。
(1)生育調査方法(パソコンを使った農業データ管理の方法を指導)
(2)収量調査(現行の目測ではなく、秤を導入して数値による収量調査を行う)
(3)土壌調査(2014年に計測したデータと2015年のデータの比較分析)
(4)官能検査(お米の味はどのくらい美味しいか、以前とどう変化したかを評価)

更に、収穫を終えた後、地元農家と共に、マーケットリサーチと販売促進活動を行う。
   

活動実施レポート

5月の活動内容

AMDAスタッフが現地入りした直後、例年では5月末から始まるはずの収穫が天候不順により稲の生育が1ヶ月遅れていることが分かった。
稲は穂が出始める出穂期(シュッスイキ)にあたる時期であった。
この期間は稲が水と栄養を一番必要とし、かつ害虫の被害にも遭いやすい時期だったため田んぼの水管理やネズミやカメムシ等の病害虫対策についてAMDAマリノ農場の現地スタッフに指導した。
また、来年の作付けに向け病害虫の対策で悩むことが無いようにパソコンを使って病害虫の写真と対策を入れた病害虫図鑑を作るよう指導した。
作業の合間を縫ってパソコンの基本操作(ワード、エクセル、パワーポイント)やレポートの書き方を教えた。
また現地の農法(特に収穫の方法と収量計算法)を把握するため、精米所を尋ねて聞き取り調査を行ったほか収穫後の有機米の販売促進活動に向けて米袋のデザインの原案作りや包装業者に出向き米袋作成のコスト計算を行った。
 
▲稲の幼穂の観察とデジタルカメラによる記録

 
▲水田の水管理のための畦水路調整、ホースによる潅水の様子

 
▲カメムシ対策用捕獲網の作成とその効果

 
▲精米所で聞き取り調査をする様子と米商品袋の例
 

6月の活動内容

6月は5月に引き続き水管理と害虫対策に重点をおいて栽培指導とパソコンの基本操作の指導を行ったほか、稲の収量構成要素の調査方法についてAMDAマリノ農場の現地スタッフに指導した。
またAMDAスタッフ以外の農家にも生育調査にも参加してもらい方法について紹介した。
害虫の種類についての聞き取り調査を行い、地元の農業改良普及員を招いて対策に関するアドバイスを行った。

 
▲稲の収量構成要素のデータ収集と分析の様子

 
▲農家と農業改良普及員を招いて害虫対策のアドバイスと稲の生育調査の様子

 

本プロジェクト内での指導内容及び計画

1.生育調査方法(パソコンを使った農業データ管理の方法を指導)

2015年1月から有機農法試験農場である棚田15枚を5つの区画に分け、種類と量の違う肥料を施しどの区が一番現地に適した肥料であるかを調査中である。2月からは毎週イネの生育データをスタッフにとってもらった。
さらにパソコンを使って収穫後収量構成要素(穂数/?、1穂あたり籾数、登熟歩合、1000粒重)の分析を行い、方法を指導すると共に収穫量の制限要因を特定し次年度の作付けの参考にしてもらう。
また、病害虫図鑑を作成し次年度の病害虫対策の指針にしてもらう。
分析調査と図鑑監修のため、パソコン(ワード、エクセル、パワーポイント)とデジタルカメラの基本操作を指導。
パソコン指導と図鑑作成は5月から現在まで実施。
 

2.収量調査(現行の目測ではなく、秤を導入して数値による収量調査を行う)

マリノの慣行法では1枚の水田から何束取れたかを参考としていたが秤の導入によりより正確な収穫量が把握でき、前年度の収穫量との比較が出来るようになるほか次年度の作付け計画の参考とすることが出来るようになる。
 

3.土壌調査(2014年に計測したデータと2015年のデータの比較分析)

過去に2度ハサヌディン大学の協力のもと土壌分析調査を試験圃場で行った。
今年度も調査することで有機栽培水田の土壌の肥沃度が向上したか否かが客観的に判断できる。
 

4.官能検査(お米の味はどのくらい美味しいか、以前とどう変化したかを評価)

日本で慣行使用されている官能検査表をインドネシア語に翻訳したものを準備。
さらに現地での炊飯米の嗜好に対し聞き取りを行い必要と思われる項目を官能検査表に追加した。
有機栽培米と普通栽培米を人が食べた場合、どちらがおいしく感じることが出来るかを客観的に判断することが出来る。
有機栽培米の味が劣る場合には食味を向上させるため施肥法の改善をはかることが出来る。
前年度の有機栽培米は株式会社サタケによる米品質の機械分析を日本で済ませてあるため、本年も分析を実施して分析値を比較する。
更に、収穫を終えた後、地元農家と共に、マーケットリサーチと販売促進活動を行う。
有機栽培米販売促進用パンフレットとパッケージの原案を作成。
 
    •  有機農法(生活向上)
    •  インドネシア
    •  2015
    •  中長期事業

 
 
PAGE TOP